ベランダの手すりや室外機の上に、毎朝のようにやってくる鳩。洗濯物にフンが落ちる、鳴き声で早朝に目が覚める、気づけば巣まで作られていた。そんな悩みから「いっそ退治したい」と考える方は多いはずです。しかし、鳩は野生の鳥として法律で守られており、個人が捕まえたり、卵やヒナを処分したりすることはできません。ベランダでできるのは、「寄せ付けない」「居着かせない」ための対策です。この記事では、国のデータにみる鳩の習性と健康リスク、ベランダで鳩を見つけたときの最初の対応、法律の注意点、被害のレベル別の対策方法、自分で対応する場合の流れ、業者に頼むタイミングまでをまとめて解説します。
- 鳩は鳥獣保護管理法の対象。許可なく捕獲したり、卵やヒナのある巣を撤去したりすると、1年以下の懲役または100万円以下の罰金の対象
- ベランダの鳩対策は、被害のレベル(羽休め→待機→ねぐら→営巣)に合わせて選ぶのが基本。ねぐらや営巣の段階では、すき間のない防鳥ネットが中心になる
- 乾いたフンを吸い込むとクリプトコックス症などの原因になることがあるため、掃除は手袋・マスクをして行う
- 賃貸・マンションは、まず管理会社や管理組合に連絡する。自分での対応が難しい場合は、許可や実績のある業者に相談する
鳩はなぜベランダに来る?

鳩の対策を選ぶ前に、なぜベランダに居着くのか、放置するとどんなリスクがあるのかを国の資料で確認しておきましょう。
習性:雨が当たらない場所に巣をつくり、一年中繁殖する
ドバト(街で見かける鳩の多くがこの種類)は、通年繁殖し(4〜5月が多い)、年3回以上繁殖、1回に2個の卵を産むことが、国立環境研究所のデータベースに示されています。営巣は、ひさしの下、ベランダ、橋梁など、雨の当たらない建築物の中で行われると説明されています。ビルや橋、マンションのベランダなど、雨のかからない場所に巣をつくることは、農林水産省の資料でも紹介されています。
- 産卵数:1回に2個
- 繁殖回数:年3回以上(自治体の資料では年5〜6回、栄養状態がよいと7〜8回とするものもある)
- 卵がかえるまで:約16〜18日
- ヒナが巣立つまで:約1〜1.5か月
- 巣の使い方:古い巣を再利用することがある
これらを合わせると、巣を残したまま放置すると、同じベランダで年に何度も繁殖されるおそれがあります。ベランダは雨を避けられて外敵も少ないため、鳩にとって居心地のよい場所になりやすいのです(編集部の読み取り)。
健康リスク:クリプトコックス症は年間約150例、オウム病は近年は少数
鳩のフンは、見た目や悪臭の問題だけではありません。鳩などの鳥のフンに関わる病気として、国の感染症の資料ではクリプトコックス症とオウム病が挙げられています。
- クリプトコックス症:土壌や鳥のフンの中にいる真菌を吸い込んで感染する。国内で年間約150例が報告され、60歳以上が80%以上、免疫が低下している人が75%以上を占める。人から人へ直接うつることはない
- オウム病:鳥のフンに含まれる菌を吸い込んで感染する。国内の報告数は2002年の54件をピークに減り、2010年以降は毎年一桁〜十数件。2024年は4件(2025年11月15日時点)。ただし重症化することがある
どちらも、患者の多くが鳩から感染したという意味ではありません。感染源はフンに限らず、オウム病ではインコ・オウム類からの報告が多いとされています。それでも、乾燥したフンを掃除機やほうきで舞い上げない・素手で触らないことは、基本のルールです。
編集部ベランダの鳩被害は、最初は「フンが落ちる」程度でも、居着くほど掃除の回数が増え、においや衛生面の心配も大きくなります。早めに「来にくい環境」にしておくほうが、結果的に手間も費用も少なくてすみます(編集部の知見)。
ベランダに鳩が来たら、まず何をすればいい?
最初のポイントは、「何をしているのか」を見極めることです。羽を休めているだけなのか、毎日決まった時間に来るのか、すでに巣材を運んでいるのかで、取るべき対応が変わります。
- 鳩を見かける時間帯と頻度:朝だけか、一日中か、夜もいるか
- とまる場所:手すり、室外機の上、物干しざお、エアコンの配管まわりなど
- 巣材(小枝)や卵の有無:近づきすぎず、離れた場所から確認する
- フンの量と場所:手すりだけか、床や壁まで広がっているか
- 住まいの種類:賃貸・分譲マンションは、ベランダが共用部分にあたる場合がある
卵やヒナを見つけたら、触らない・落とさない・捨てないことが鉄則です。その場合は、巣立ちを待つか、許可を得た対応が必要になります。賃貸や集合住宅では、管理会社や管理組合への連絡も早めにしておきましょう。





ベランダの現場では、手すりのフンの掃除だけを繰り返しているお宅が少なくありません。ただ、鳩が「ここは落ち着ける場所」と覚えてしまっている間は、掃除しても戻ってきます。とまる場所、隠れる場所、巣を作れそうなすき間を、先にふさぐのが効果的です。
鳩は勝手に退治できる?ベランダで知っておきたい法律
「退治」というと捕まえて処分するイメージがありますが、ドバトも野生の鳥です。鳥獣保護管理法の対象になり、鳥類の卵も例外ではありません。
鳥獣又は鳥類の卵については、その捕獲、殺傷又は採取が禁止されています
環境省「捕獲許可制度の概要」
そのため、ベランダで個人ができるのは、鳩を寄せ付けない対策や、卵・ヒナのいない巣の撤去までです。寄せ付けない工夫をしても被害を防げない場合に、個人で捕獲するには捕獲許可等が必要であり、「怖い」「うるさい」という理由だけでは駆除できないと、横浜市の資料に説明されています。
許可なく捕獲・殺傷・飼育をすると、1年以下の懲役または100万円以下の罰金の対象になります。「ネットに絡まって死んでしまった」といった事故も避けるため、ネットは目の細かいものを、すき間なく張ることが大切です(編集部の知見)。
- できる:追い払いの工夫、とまり場所・すき間の対策、防鳥ネットの設置、フンの清掃、卵・ヒナのいない巣の撤去
- 許可が必要:鳩の捕獲、卵やヒナのある巣の撤去(有害鳥獣捕獲の許可、または許可を持つ業者)
- 自治体は原則動かない:私有地(自宅のベランダ)の駆除は行っていない自治体が多く、土地や建物の所有者・管理者の判断になる
たとえば【神奈川】では、川崎市が捕獲や駆除は行っておらず、巣のみの撤去であれば申請は不要と説明しています。【東京】の立川市も、巣の撤去や捕獲は市では行っておらず、市に相談すると有料の専門業者を紹介してもらえるとしています。
鳩のベランダ退治の方法


ベランダの鳩対策は、被害の進み具合に合わせて選ぶのが基本です。被害を4つのレベルに分けて、レベルごとの対策を紹介している【東京】板橋区の資料があります。まず全体像を確認しましょう。
| 被害レベル | 鳩の状態 | 主な対策 |
|---|---|---|
| レベル1 | 羽を休めて短時間いる | 猛禽類の模型、光るもの・視覚錯乱テープ、風通しをよくして人の気配を出す、物陰をつくらない |
| レベル2 | 待機場所として使っている | ジェルタイプの忌避剤、剣山(防鳥ピン)、室外機の下などのすき間を段ボールなどでふさぐ |
| レベル3 | ねぐらとして長時間居着く(早朝・深夜も) | 防鳥ネットの設置。壁とのすき間があると効果が薄れるため、専門業者への依頼も検討 |
| レベル4 | 巣作り・産卵 | 卵・ヒナがなければ撤去できる。卵・ヒナがある場合は許可なく撤去できない |
レベル1:視覚で驚かせる・人の気配を出す
羽を休めに来る程度の段階では、猛禽類(タカなど)の立体モデルで驚かせたり、光るものや視覚錯乱テープを設置したりします。ベランダの風通しをよくして人の気配を出す、物陰をつくらない、といった工夫も紹介されています。
ミラーCDをつるして光の反射を利用する方法も、立川市の資料で紹介されています。ただし、威嚇系の対策は慣れが生じやすいため、位置を変えるなどの工夫が必要です(編集部の知見)。
レベル2:とまらせない・入り込ませない
待機場所として使われ始めたら、手すりなどにジェルタイプの忌避剤や鳥よけ用の剣山を設置します。手すりの上にテグスを張る方法も、立川市の資料で紹介されています。手すりの幅は5〜6cmくらいが目安とされています。
洗濯機やエアコンのコンプレッサーの下に入り込まないよう、段ボールなどでふさぐ方法もあります。風通しをよくし、物を置かず、室外機などのすき間をふさぐ工夫が有効とされています(東京都環境局の資料)。
レベル3:防鳥ネットですき間なく囲う
ねぐらとして長時間居着くようになったら、防鳥ネットの出番です。ベランダには防鳥ネットをすき間なく張ると効果的と、横浜市の資料に書かれています。壁とネットの間にすき間があると効果が薄れるおそれがあるため、専門業者への依頼が推奨されている、という板橋区の資料もあります。
ネットは「張ること」より「すき間をつくらないこと」が大切です。フックの位置やベランダの形状に合わせた施工が必要で、ここは業者に頼みやすい部分でもあります。
レベル4:巣は「卵・ヒナの有無」で対応が分かれる
巣づくりが始まったばかりの段階や、ヒナが巣立ったあとの空の巣は、許可なく撤去できます。手袋・マスクを着用し、ごみとして処分します。再利用を防ぐため、ヒナが巣立ったら速やかに撤去するのが基本です。
卵やヒナがいる場合は、鳥獣保護管理法により許可なく撤去できません。卵は約16〜18日でかえり、ヒナは約1〜1.5か月で巣立つので、巣立ちを待つか、許可を持つ業者に相談します。
ドバトといえども巣に卵やヒナがいるときは、鳥獣保護管理法により、卵やヒナを取り除くことは禁止されています。
埼玉県「野生鳥獣の管理(野生鳥獣に関するお困りごと)」



忌避剤・剣山・ミラーなどの対策は、単独だと慣れや「すき間からの侵入」で効果が落ちることがあります。被害の段階に合わせて、とまり場所・すき間・ネットを組み合わせるのが現実的です(編集部の知見)。
ベランダの鳩対策を自分で行う場合の流れ
卵やヒナがある巣、高所やベランダの外側での作業は、転落や法律違反のおそれがあります。無理に自分で行わず、管理会社や許可を持つ業者に相談してください。以下は、自分でできる範囲に限った流れの目安です。
- 鳩の来る時間・とまる場所・巣材の有無を確認し、写真とメモを残す(卵・ヒナがあれば触らず、管理者や業者に相談する)
- 使い捨て手袋とマスクを着用し、フンを水で湿らせてから取り除く(乾いたまま掃くと舞い上がる)
- 洗剤や消毒用の薬剤で床・手すりを拭き、乾かす
- 手すり・室外機の上に剣山やテグス、ジェル忌避剤を設置する
- 室外機の裏や下のすき間を、段ボールなどでふさぐ
- 物干しざお・植木鉢・段ボールなど、物陰になるものを片づける
- ネットが必要な場合は、すき間なく張る(難しい場合は業者に依頼する)
- 数日おきに様子を見て、また来ていたら対策を見直す
途中で卵が見つかったり、ネットを張る場所が高所だったりしたときは、そこで作業を止めて相談しましょう。とくに「卵の有無がわからない」「手すりの外側に手を出す必要がある」といったときは、無理をしないことが大切です。
ベランダの鳩退治の注意点とポイント
対策そのものに加えて、掃除の仕方、賃貸での手続き、エサやりなど、つまずきやすい点をまとめて確認しましょう。
フンの掃除は手袋・マスクをつけて、湿らせてから
野鳥は様々な細菌や寄生虫を持っているおそれがあるとして、清掃時は使い捨てのビニール手袋やマスクを着用し、フンに直接触れないよう、東京都環境局の資料に示されています。乾いたフンを掃くと粉じんが舞うため、湿らせてから取り除き、作業後は手洗いをしましょう(編集部の目安)。
賃貸・マンションでは管理会社・管理組合へ
ベランダが共用部分にあたる場合、勝手にネットを張ったり、工事をしたりできないことがあります。集合住宅のベランダの被害は、管理者への相談が一つの方法とされています(横浜市の資料)。ネットの色や固定方法、費用の負担についても、先に確認しておくとトラブルを防げます。
エサやりはしない。条例で禁止する自治体も
エサを与えると、鳩の数が人為的に増え、特定の場所に集まる原因になります。公共の場所でのハト等への給餌を禁止する条例が2025年4月に施行され、命令に従わない場合は5万円以下の過料が科される、という板橋区の例があります。近所でエサやりをしている人がいる場合は、まず自治体や管理者に相談しましょう。
ヒナが落ちていても、むやみに触らない
ヒナが巣から落ちていても、近くに親鳥がいることが多いため、直接触らないようにとされています。大半は元気なヒナであり、拾って保護する必要はないと、東京都環境局の資料に示されています。
自分での対応が難しい場合は駆除業者へ


次のようなときは、無理に自分で対応せず、専門業者に相談するほうが安全です。
- 卵やヒナのある巣があり、待てない事情がある
- 対策をしても、数日で戻ってくる
- ベランダが広い、または高層階で、ネット施工が難しい
- フンが大量にたまり、悪臭や衛生面が気になる
- ベランダの外側など、転落の危険がある場所に巣がある
- 賃貸・マンションで、自分の判断で動きにくい
害虫・害獣駆除サービスに関する相談は、全国の消費生活センターで年々増えています。相談件数は2018年度の854件から、2023年度には2,290件と約2.7倍になり、契約をめぐるトラブルも目立ちます。
とくに気をつけたいのが料金のトラブルです。広告では「約500円〜」とされていたのに、作業後に約20万円を請求された、「約1,000円から」の広告が最終的に約50万円になったという事例も紹介されています。極端な格安料金をうたう広告には注意し、複数社から見積もりを取る・不安をあおる営業には応じない・納得できないときはその場で支払わないことが大切です。



見積もりを比べるときは、「ネットの施工範囲とすき間対策」「卵・ヒナの扱い(許可の有無)」「清掃・消毒が含まれるか」の3点を確認しましょう。作業内容と追加料金の条件が書面にあるかも大切です(編集部の知見)。
鳩のベランダ退治に関するよくある質問
鳩を捕まえたり、殺したりしてもいいですか?
いいえ。ドバトも鳥獣保護管理法の対象で、許可なく捕獲・殺傷すると1年以下の懲役または100万円以下の罰金の対象になります。ベランダでは、寄せ付けない対策を行いましょう。
ベランダに鳩の巣と卵があります。撤去してもいいですか?
卵やヒナがある巣は、許可なく撤去できません。卵は約16〜18日でかえり、ヒナは約1〜1.5か月で巣立ちます。待てない場合は、許可を持つ業者や自治体に相談してください。卵やヒナのいない巣は、手袋・マスクを着けて撤去できます。
忌避剤や剣山だけで、鳩は来なくなりますか?
被害が軽い段階では効果が期待できますが、ねぐらや営巣の段階では、防鳥ネットなどですき間をふさぐ対策が中心になります。被害のレベルに合わせて、複数の対策を組み合わせるのが基本です。
賃貸のベランダにネットを張ってもいいですか?
ベランダが共用部分にあたる場合は、勝手に設置できないことがあります。管理会社や大家さん、管理組合に連絡して、設置方法や費用負担を確認してからにしましょう。
業者に頼むと、費用はどのくらいかかりますか?
ベランダの広さ、ネットの範囲、フンの清掃・消毒の有無、巣の撤去の有無などで大きく変わるため、一律の金額はいえません。極端に安い広告には注意し、複数社から見積もりを取って内訳を比べてください。
- 鳩は法律で守られており、捕獲や、卵・ヒナのある巣の撤去は許可なくできない
- 鳩は雨の当たらないベランダに、一年中繁殖する。巣を残すと同じ場所で何度も繁殖されやすい
- ベランダの対策は、被害レベルに合わせて、模型・剣山・テグス・忌避剤・防鳥ネットなどを組み合わせる
- フンの掃除は手袋・マスクで。賃貸は管理者へ連絡し、難しい場合は許可や実績のある業者に相談する










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