夕方になると家のまわりを不規則に飛び回る小さな影。軒下や戸袋、屋根裏から聞こえるキキキという鳴き声や、カサカサという物音。これらの正体は、日本の住宅街でもっともよく見られるコウモリ「アブラコウモリ」かもしれません。アブラコウモリは家屋をすみかにしている唯一のコウモリで、鳥獣保護管理法の対象となる野生動物のため、「捕まえて駆除する」ことはできず、追い出してすき間をふさぐことが対策の基本になります。この記事では、アブラコウモリの特徴と1年の動き、駆除(追い出し)に向いた時期、駆除の方法と自力で行う流れ、法律上の注意点、業者に頼むべきタイミングまでをまとめて解説します。
- アブラコウモリは家屋をすみかにする唯一のコウモリで、許可なく捕獲・殺傷はできないため、「追い出す+ふさぐ」が駆除の基本
- 冬眠(11月中旬〜3月下旬)と出産・子育て(6〜8月ごろ)の時期は追い出しが難しく、春と秋を目安に行う
- 6mmほどのわずかなすき間からも出入りするため、追い出したあとの封鎖を見落とさない
- フンや尿の掃除は素手で触らず、高所作業や数十匹の集団は無理をせず専門業者に相談する
アブラコウモリを見つけたら、まず何をすればいい?

家の中や軒先でアブラコウモリを見つけたら、まず「素手で触らない」「捕まえようとしない」ことが大切です。野生のコウモリには寄生虫や感染症の原因となる菌・ウイルスが付いている恐れがあるほか、許可なく捕獲・殺傷すると、1年以下の懲役または100万円以下の罰金の対象になるとされています。
そのうえで、出入りしている場所、フンの落ちている位置、見かける時間帯をメモや写真に残しておきましょう。アブラコウモリは夕方から夜にかけて活動するため、日没後30分ほど家のまわりを見守ると、出入り口の見当がつきやすくなります(編集部の目安)。
編集部アブラコウモリの駆除は、「やっつける」のではなく「出て行ってもらい、戻れなくする」作業です。まずはどんな作業なのか、実際の様子を見てみましょう。


こちらは、屋根裏と外壁の取り合い部分に残っていたすき間を、コウモリが外へ出たのを確認したあとにふさいでいる場面です。出入りに使われた穴のまわりにはフンが固まっていて、これが封鎖位置を見つける手がかりになります。



見つけたすき間を1か所ふさいで終わりにすると、別の出入り口から戻ってきます。家全体の外周をぐるりと見て、「同じくらいのすき間が他にないか」を確認するのが、封鎖を成功させるコツです。
では、アブラコウモリとはどんな生き物なのか、特徴から確認していきましょう。
アブラコウモリの特徴と生態


| 項目 | アブラコウモリ(イエコウモリ)の特徴 |
|---|---|
| 大きさ | 翼を広げた長さ(翼長)は約23cm、体重は5〜10g |
| 体の色 | 黒褐色〜暗灰褐色 |
| すみか | 家屋をすみかにしている唯一のコウモリ。屋根裏などで数十匹が集団生活することもある |
| 食べ物 | 小型のハエ目、チョウ目(ガ)、カメムシ目、コウチュウ目などの昆虫を、飛びながら食べる |
| 見られる場所 | 街灯のまわり、川や池、田んぼの上空、住宅街、商店街、駅前など |
| 飛び方 | 急降下や急反転をくり返す、不規則な飛び方 |
アブラコウモリは、市街地周辺や里山など、身近な環境でもっともよく見られるコウモリです。体重は5〜10gほどと非常に小さく、「家屋をすみかにしている唯一のコウモリ」として知られています。人家の周辺を活動の場にすることから、イエコウモリとも呼ばれます。
食べ物はガやカゲロウの仲間をはじめとした昆虫で、街灯のまわりで虫を追って飛ぶ姿をよく見かけます。つまり、家の外灯やベランダの明かりに虫が集まる環境ほど、アブラコウモリにとっても魅力的な場所になりやすいということです。害虫を食べてくれる益獣としての一面もあり、鳥獣保護管理法による保護の対象になっています。
アブラコウモリの1年の動きと、駆除に向いた時期
| 時期 | アブラコウモリの動き | 駆除(追い出し)の目安 |
|---|---|---|
| 11月中旬〜3月下旬 | 冬眠する | 追い出しが難しく、避ける |
| 4月ごろ〜6月 | 冬眠から覚め、春に受精。約70日の妊娠期間を経て出産に備える | 出産前であれば比較的向いている(編集部の目安) |
| 6月〜8月 | 出産・子育てのシーズン(6〜8月ごろ) | 追い払うのが難しく、親子を引き離すおそれもあるため避ける |
| 9月〜11月前半 | 子が育ち、10月に交尾する | 冬眠前の時期で、比較的向いている(編集部の目安) |
アブラコウモリの駆除では、「いつ追い出すか」が成否を分けます。冬眠が11月中旬〜3月下旬、出産が7月〜8月とされ(県立公園の資料)、6〜7月が出産シーズンとする情報(福岡県)もあります。また、10月に交尾し、翌春の4月末に受精、約70日の妊娠期間を経て出産に至るとされています(国立環境研究所)。
7月初旬〜8月中旬の繁殖期に入ると追い払うのは難しいとされ(京都市)、冬眠の時期と夏の出産の時期を避けるよう呼びかける自治体(北九州市)もあります。これらをふまえると、冬眠明けから出産前の春(4〜5月ごろ)と、子の巣立ち後から冬眠前の秋(9〜10月ごろ)が、追い出しに向いた時期の目安です(編集部の目安)。繁殖期に出入り口をふさぐと、親が戻れず子どもだけが取り残されるおそれもあります。



「今すぐなんとかしたい」という気持ちが強いほど、時期を見落としがちです。もし今が子育ての時期なら、準備だけ先に進めて、封鎖は時期が来てから行うほうが、結果的にうまくいきやすくなります。
アブラコウモリの被害と、放置するリスク
アブラコウモリは人を襲う動物ではありませんが、住みつかれると、フンや尿による汚れ・においをはじめ、さまざまな影響が出ます。ここでは、主な被害と、放置するリスクを整理します。
フン・尿・物音による被害
屋根裏には数十匹が同じ巣に生息していることがあり、フンや尿がうず高く積み重なると、においやシミの原因になるとされています。フンは5〜10mmほどで、昆虫しか食べないためもろく、軒先や屋根の下に落ちていることが多い、と紹介されています。ほかにも、天井裏の騒音や見た目の不快感など、日常生活の悩みにつながります。
感染症のリスクと、素手で触らない理由
野生のコウモリには、寄生虫や感染症の原因となる菌・ウイルスが付いている恐れがあるため、本体にもフンにも素手で触らないことが基本です。コウモリや鳥のフンによく含まれるカビを吸い込んで感染するヒストプラスマ症は、顔にフィットした防塵マスクの着用や、土を一度湿らせて作業することが予防として勧められています。フン掃除をするときの備えとして、参考になります。
放置すると相談が増える?数字で見る被害の広がり
| 年度 | コウモリに関する相談件数 |
|---|---|
| 平成15年度 | 9件 |
| 平成29年度 | 49件 |
コウモリに関する相談は、平成15年度の9件から平成29年度には49件へと約5倍に増加したことが神奈川県ペストコントロール協会の資料で示されており、主な内容は、フンによる汚染、天井裏の騒音、見た目の不快感でした。放置すると、フンの堆積やにおいの定着、数の増加につながりやすいため、早めの対処が大切です。
アブラコウモリ駆除の方法
| 方法 | 具体的な内容 | 特徴 |
|---|---|---|
| 追い出す | 追い出し用の忌避スプレー、ライトなどの強い光、火を使わない煙の駆除剤を使う | 追い出してから閉塞すれば、それ以上の被害はめったにない |
| すき間をふさぐ | 日没後、コウモリが外出した隙に、4メッシュの金網やパテなどで埋める | 6mmほどのすき間からも出入りするため、見落としに注意 |
| フンを除去・消毒する | フンの除去、消臭、殺虫殺菌を行い、清潔な環境に戻す | 範囲が広い場合は業者向き |
| 超音波・反射グッズを補助的に使う | 超音波発生装置や、CD・アルミ箔の設置 | 単独では効果に差が出やすい |
アブラコウモリの駆除は、「追い出す」「ふさぐ」「片づける」の3つをセットで行うのが基本です。追い出すだけではまた戻ってきてしまい、ふさぐだけでは中に残った個体が出られなくなるおそれがあります。それぞれの方法を見ていきましょう。
忌避スプレーや光、煙で追い出す方法
個人で対応できる場合は、追い出し用の忌避スプレーなどを使って、まずコウモリを外へ出すことから始めます。ほかにも、夜行性のコウモリが強い光に弱いことを利用して、ライトで誘導して外へ出す方法や、火を使わずに煙の出るタイプの害虫駆除剤を屋根裏に置く方法、ナフタリンなどの忌避剤で棲み心地を悪くする方法が紹介されています。いずれも殺傷が目的ではなく、「追い出す」ことが目的です。壁に張りついた個体を追い払ってもまた戻ってくることが多いため、追い払うだけで終わらせないことが大切です。
金網やパテですき間をふさぐ方法
コウモリは6mmほどのわずかな隙間からも出入りが可能です
公益社団法人 東京都ペストコントロール協会「コウモリの防除方法」
追い出したあとは、日没後、コウモリが餌を取りに外出した隙に、4メッシュの金網(5.25mm目)やパテなどで出入り口を埋めます。軒下の場合は、ネット(網)で覆う方法もあります。コウモリが出入りしている穴にはフンが堆積するため、その位置が目印になります。脚立やハシゴからの転倒にも気をつけましょう。
フンの除去・消臭・消毒を行う方法
長期間住みつかれていた場合は、糞の除去、消臭、殺虫殺菌まで行い、清潔な環境に戻すことが必要になります。手袋とマスクを着け、素手では触れないようにしましょう。屋根裏全体に広がっている場合は、自力で行うのが難しいため、清掃・消毒まで対応できる専門業者に任せたほうが安心です。
超音波や反射グッズを補助的に使う方法
超音波発生装置や、CD・アルミ箔を侵入口に設置して超音波を乱反射させる方法も紹介されています。ただし、これらは単独では効果に差が出やすく、追い出しやすき間ふさぎと組み合わせる補助的な位置づけで考えるのが現実的です。



追い出す方法をいくつ試すよりも、「ふさぐ」を丁寧に行うほうが、結果的に再発を防げます。追い出しは「その日の夜にふさぐ」までを1セットとして考えてみてください。
自力でアブラコウモリを駆除する場合の流れ・手順
ここで紹介する流れは、軒下や戸袋など安全に手が届く範囲で、住みついている数が少ない場合を想定した参考情報です。屋根裏の奥まで入り込んでいる、数十匹が確認できる、高所作業が必要、といった場合は、無理をせず業者への相談を検討してください。
アブラコウモリは捕獲・殺処分ができないうえ、高所作業には転落の危険もあります。自力での駆除には限界があるため、基本的には専門業者への依頼をおすすめします。以下はあくまで参考情報としての手順です。
- 夕方に家のまわりを観察し、出入りの場所とフンが堆積している穴を特定する
- 冬眠(11月中旬〜3月下旬)や出産・子育て(6〜8月ごろ)の時期でないか確認する
- 忌避スプレーや光を使い、コウモリを外へ追い出す
- 日没後、外出したことを確認してから、金網やパテで出入り口をふさぐ
- 手袋・マスクを着けてフンを掃除し、数日おいて、新しいフンや鳴き声がないか点検する
追い出しても戻ってくる、新しいフンが続くといった場合は、見落としたすき間が残っている可能性があります。無理をせず、早めに業者へ相談しましょう。
アブラコウモリ駆除の注意点とポイント
アブラコウモリの駆除で迷いやすいのは、「法律」「自治体の対応」「戻ってきたとき」の3つです。ここでは、それぞれの場面での考え方とポイントをまとめます。
捕獲・殺処分はできない?法律上の注意
野生鳥獣は、鳥獣保護管理法によって捕獲ができないとされています。違法な捕獲は1年以下の懲役または100万円以下の罰金に処せられる可能性があると、東京都環境局のページでも示されています。アブラコウモリは益獣として保護されているため、「捕まえて処分する」のではなく、「追い出して、すき間をふさぐ」のが基本です。
市区町村では駆除してもらえないことが多い
市区町村の対応は自治体によって異なりますが、コウモリの捕獲や駆除自体を行っていない例があります。たとえば横浜市では、駆除は行っておらず、自分で対処するか専門業者(神奈川県ペストコントロール協会など、有料)に相談する形になっており、捕獲の許可については神奈川県の窓口が相談先とされています。同じように、市では駆除や捕獲をしておらず自己対応が求められている例(大津市)もあります。
追い出してもまた戻ってきたときの対処
追い払っても、アブラコウモリは戻ってくることが多いとされています。戻ってきた場合は、見落としたすき間が残っている可能性が高いため、夕方の出入りを観察しながら、換気口や屋根と壁の境目、戸袋まわりなどを重点的に再点検し、金網やパテで補強しましょう。再点検は、冬眠前の秋にあわせて行うと、翌年の被害を防ぎやすくなります(編集部の目安)。
自分での対策が難しい・改善しない場合は業者へ


追い出してもすぐに戻ってくる、侵入口が高所や屋根裏で自分では届かない、数十匹が住みついている、といった場合は、自力での対応が難しい状況です。高所作業や広範囲の閉塞、多数の個体が生息している場合は、神奈川県ペストコントロール協会も、相談するよう勧めています。
- 追い出しても、数日〜数週間のうちにまた戻ってくる
- 侵入口が高所・屋根裏などで、自分では安全に作業できない
- フンや尿が広範囲に溜まり、臭いやシミが取れない
- 出産・子育ての時期など、自分で対応すべきでない時期に住みつかれている
専門業者に依頼すると、出入り口の調査から追い出し、封鎖、フンの除去・消臭・消毒までまとめて対応してもらえます。ただし、害虫・害獣駆除のトラブルは増えており、国民生活センターの発表では、2023年度の相談件数は前年度の同じ時期と比べて約1.5倍に増加し、とくに10〜20歳代が契約当事者となるケースが急増したとされています。
極端に安い価格表示への警戒、複数社からの見積もり取得、クーリング・オフ制度の活用、消費者ホットライン「188」への相談などが呼びかけられています。作業範囲(封鎖・清掃・消毒が含まれるか)と総額を、契約前に確認して、複数社を比較することが、納得できる依頼につながります。



コウモリは時期と封鎖の精度が結果を左右するため、業者選びでは「施工の時期の判断」と「再発時の対応(保証など)」を確認しておくと安心です。見積もりの内訳もあわせて比べてみましょう。
よくある質問
Q. アブラコウモリを自分で捕まえて処分してもいいですか?
A. 鳥獣保護管理法により、許可なく捕獲・殺傷することはできません。違反すると1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科される可能性があるため、追い出して、すき間をふさぐ方法で対応しましょう。
Q. アブラコウモリの駆除は、いつ行うのがいいですか?
A. 冬眠(11月中旬〜3月下旬)と、出産・子育て(6〜8月ごろ)の時期は避けるのが基本です。そのため、春(4〜5月ごろ)や秋(9〜10月ごろ)が目安になります。
Q. アブラコウモリとイエコウモリは違う種類ですか?
A. 同じ種類です。一般的な和名はアブラコウモリで、人家の周辺で活動することからイエコウモリとも呼ばれます。
Q. アブラコウモリは、どのくらいのすき間から入ってきますか?
A. 6mmほどのわずかなすき間からも出入りできるとされています。外壁のすき間や換気口、戸袋まわりなどを細かく点検し、4メッシュの金網やパテでふさぎましょう。
Q. 市役所に頼めば、アブラコウモリを駆除してもらえますか?
A. 自治体によって対応は異なりますが、横浜市や大津市のように、コウモリの捕獲・駆除自体を行っていない例があります。その場合は、自分で対処するか、有料の専門業者に相談する形になります。
アブラコウモリは家屋をすみかにする唯一のコウモリで、鳥獣保護管理法の対象のため、「追い出して、すき間をふさぐ」のが駆除の基本です。冬眠(11月中旬〜3月下旬)や出産・子育て(6〜8月ごろ)の時期を避け、春や秋の日没後、コウモリが外出したあとに、6mmほどのわずかなすき間まで金網やパテでふさぎましょう。フンの掃除は素手で触らず、高所や数十匹の集団は無理をせず、料金トラブルにも注意しながら複数の業者を比較して相談することをおすすめします。










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