夕暮れどきに、家の軒先や戸袋から小さな影がパタパタと飛び出していく。屋根裏からカサカサという音がする。壁や玄関に黒っぽいフンが落ちている——こうしたサインが出ていたら、家にイエコウモリが住みついているかもしれません。イエコウモリは、正式にはアブラコウモリと呼ばれる小型のコウモリで、鳥獣保護管理法の対象となる野生動物のため、「捕まえて駆除する」ことはできず、追い出してすき間をふさぐのが基本です。この記事では、イエコウモリの特徴と住みついたサイン、駆除(追い出し)の方法、法律や時期の注意点、自力で行う場合の流れ、業者に頼むべきタイミングまでをまとめて解説します。
- イエコウモリ(アブラコウモリ)は鳥獣保護管理法で守られており、よほどのことがない限り駆除はできない
- 6mmほどのすき間からも出入りできるため、追い出したあとの「すき間ふさぎ」が再発防止の決め手になる
- 繁殖期(7月初旬〜8月中旬)や冬眠の時期は避け、夜に外出したあとに作業する
- 高所作業や、数十匹が住みついている場合は、無理をせず専門業者への相談を検討する
イエコウモリを見つけたら、まず何をすればいい?

家の中や軒先でイエコウモリを見つけたら、まず「素手で触らない」「捕まえようとしない」ことが大切です。野生のコウモリには寄生虫や感染症の原因となる菌・ウイルスが付いている恐れがあるほか、鳥獣保護管理法により、許可なく捕獲・殺傷すると1年以下の懲役または100万円以下の罰金の対象になるとされています。
イエコウモリは、カやユスリカなどを食べる益獣としての一面もあり、「駆除」といっても退治するのではなく、家から出て行ってもらい、戻れないようにすることがゴールです。まずは慌てず、出入りしている場所とフンの位置、時間帯を確認するところから始めましょう。
編集部「駆除」と聞くと退治するイメージですが、コウモリの場合は「追い出し」と「出入り口の封鎖」が実質的な駆除になります。どんな作業なのか、まずは現場の様子を見てみましょう。


こちらは、フンが溜まっている出入り口を特定し、コウモリが餌を取りに出たあとの夜に、金網とパテですき間をふさいでいる場面です。出入りする穴にはフンが堆積するため、その位置が封鎖の目印になります。



封鎖する前に、夕方のうちに「どこから何匹出ていくか」を数えておくのがコツです。出ていった数を把握しておくと、中に取り残される個体がいないかの判断材料になります。
では、イエコウモリとはどんな動物なのか、特徴から確認していきましょう。
イエコウモリの特徴と生態


| 項目 | イエコウモリ(アブラコウモリ)の特徴 |
|---|---|
| 呼び名 | 一般的な和名はアブラコウモリ。人家の周辺で活動することからイエコウモリとも呼ばれる |
| 大きさ | 体重5〜6gほどの小型のコウモリ |
| 分布 | 北海道を除く日本全国の都市や都市周辺部で普通に見られる |
| 食べ物 | カ、ユスリカ、植物害虫などの昆虫類。1日に体重の30%ほどの昆虫を食べる |
| 群れ | 同じ巣に数十匹が生息していることがある |
イエコウモリは、体重5〜6gほどという非常に小さなコウモリで、北海道を除く全国の都市やその周辺で普通に見られる種類です。人の出現前には存在しなかった、家屋などの人工建築物をすみかにするコウモリも増えており、イエコウモリはその代表的な存在といえます。
人家の周辺のみで活動するため、屋根裏、戸袋、軒下、換気口、外壁のすき間などに住みつきやすく、同じ巣に数十匹が一緒に暮らしていることもあります。1日に体重の30%にもなる量の昆虫を食べるため、数が増えるとそれだけフンや尿の量も多くなり、被害が目立ちやすくなります。
イエコウモリが家に住みついたサインと被害
イエコウモリは夜行性のため、住みついていても姿を見る機会は多くありません。そのぶん、フンや音、夕方の出入りといった「サイン」で気づくのが一般的です。ここでは、住みついたサインの見分け方と、どんな被害が出やすいのかを整理します。
住みついたサインと、フンの見分け方
もっとも分かりやすいのは、出入り口に堆積するフンです。コウモリが出入りしている穴にはフンが堆積し、夜間の出入りも確認できるとされています。夕方に軒下や戸袋から小さな影が飛び出す、天井裏から羽ばたきのような音がする、といった様子も目安になります。
フンはネズミのものと似ていますが、アルコールで処理するとフンの内容物がすべて昆虫の表皮や脚などであるのが特徴です。ときどき、イエコウモリの毛が見つかることもあります。一方、クマネズミのフンでは毛が見つかり、昆虫の破片は少量で、毛の形状もイエコウモリとは異なるとされています。見た目だけで判断がつかない場合は、専門業者に確認してもらうのが確実です。
主な被害と、増えている相談件数
主な被害は、フンと尿の汚れ・臭いです。同じ巣に数十匹が生息することがあり、フンや尿がうず高く積み重なると、においやシミの原因になるとされています。ほかにも、天井裏の騒音や、見た目の不快感といった相談が寄せられています。
| 年度 | コウモリに関する相談件数 |
|---|---|
| 平成15年度 | 9件 |
| 平成29年度 | 49件 |
コウモリに関する相談は、平成15年度の9件から平成29年度には49件へと約5倍に増加したことが神奈川県ペストコントロール協会の資料で示されており、主な内容はフンによる汚染、天井裏の騒音、見た目の不快感でした。都市部の住宅で、イエコウモリに悩む方が増えていることがうかがえます。



「天井裏のカサカサ音」を、ネズミだと思い込んで対策を始める方も多いようです。フンの中身で見分けられるので、まずは落ちているフンの状態を落ち着いて確認してみてください。
イエコウモリ駆除の方法
| 方法 | 具体的な内容 | 特徴 |
|---|---|---|
| 忌避スプレーなどで追い出す | 追い出し用の忌避スプレーなどを使い、すき間から出てもらう | 追い出したあとに封鎖すれば、それ以上の被害はめったにない |
| すき間を金網やパテでふさぐ | 日没後、コウモリが外出した隙に、金網やパテで出入り口を埋める | 6mmほどのすき間からも出入りできるため、細かく確認する |
| 壁面の個体を追い払う | 壁に付着している場合に、市販の殺虫剤などで追い払う | 追い払っても戻ってくることが多い |
| 糞の除去・消臭・消毒を行う | 長期間定着した場合は、糞の除去、消臭、殺虫殺菌で清潔な環境に戻す | 範囲が広い場合は業者向き |
イエコウモリの駆除は、「追い出す」「ふさぐ」「汚れを片づける」の3つの流れで進めます。どれか1つだけでは再発しやすく、特に「ふさぐ」を後回しにすると、戻ってくる原因になります。それぞれの方法を見ていきましょう。
忌避スプレーなどで追い出す方法
個人で対応できる場合は、追い出し用の忌避スプレーなどを使って、まずコウモリを外へ出すことから始めます。すき間(1.5cm程度)を特定し、追い出してから閉塞材でふさげば、それ以上の被害が出ることはめったにないとされています。壁に張りついている個体には、市販の殺虫剤などで追い払う方法も紹介されていますが、目的はあくまで「追い払うこと」であり、殺傷してはいけません。吹きかけたあとも戻ってくることは多いため、追い払うだけで終わらせないことが大切です。
金網やパテですき間をふさぐ方法
追い出したあとは、出入り口をふさぎます。コウモリは6mmほどのわずかなすき間からも出入りできるため、見落としがないよう注意が必要です。作業は、日没後、コウモリが餌を取りに外出した隙に行い、4メッシュの金網(5.25mm目)やパテなどで埋めていきます。フンが堆積している穴が出入り口の目印になるため、位置を確認してから作業しましょう。脚立やハシゴからの転倒にも気をつけてください。
コウモリは6mmほどのわずかな隙間からも出入りが可能です
公益社団法人 東京都ペストコントロール協会「コウモリの防除方法」
光や煙で追い出しを補助する方法
夜行性のコウモリは強い光に弱いため、ライトなどの強い光で誘導して家の外へ出し、そのまま侵入口を塞ぐ方法もあります。ほかにも、火を使わずに煙の出るタイプの害虫駆除剤を屋根裏に置いて追い出す方法や、ナフタリンなどの忌避剤で棲み心地を悪くする方法が紹介されています。いずれも補助的な位置づけで、追い出したあとのすき間ふさぎとセットで行うことが前提です。
糞の除去・消臭・消毒を行う方法
長期間住みつかれていた場合は、糞の除去、消臭、殺虫殺菌まで行い、清潔な環境に戻すことが必要になります。フンには素手で触れず、手袋やマスクを着けて作業しましょう。屋根裏全体に広がっている場合は、自力で行うのが難しいため、清掃・消毒まで対応できる専門業者に任せたほうが安心です。



追い出しスプレーで満足してしまい、すき間をそのままにして戻られる——というのが典型的な失敗パターンです。「追い出したら、その日のうちに(夜に)ふさぐ」までを1セットとして考えましょう。
自力でイエコウモリを駆除する場合の流れ・手順
ここで紹介する流れは、軒下や戸袋など安全に手が届く範囲で、住みついている数が少ない場合を想定した参考情報です。屋根裏の奥まで入り込んでいる、数十匹が確認できる、高所作業が必要、といった場合は、無理をせず業者への相談を検討してください。
コウモリは捕獲・殺処分ができないうえ、高所作業には転落の危険もあります。自力での駆除には限界があるため、基本的には専門業者への依頼をおすすめします。以下はあくまで参考情報としての手順です。
- 夕方に家のまわりを観察し、出入りする場所とフンが堆積している穴を特定する
- 繁殖期(7月初旬〜8月中旬)や冬眠の時期でないか、時期を確認する
- 忌避スプレーなどを使い、コウモリを外へ追い出す
- 日没後、外出したことを確認してから、金網やパテですき間をふさぐ
- 手袋・マスクを着けてフンを掃除し、数日おいて新しいフンがないか点検する
追い出しても戻ってくる、新しいフンが続くといった場合は、見落としたすき間が残っている可能性があります。無理せず、早めに業者へ相談しましょう。
イエコウモリ駆除の注意点とポイント
イエコウモリの駆除で迷いやすいのは、「法律」「時期」「戻ってきたとき」の3つです。ここでは、それぞれの場面での考え方とポイントをまとめます。
捕獲・殺処分はできない?法律上の注意
コウモリは鳥獣保護管理法の対象となっており、東京都環境局のページでは、許可なく野生鳥獣を捕獲した場合は1年以下の懲役または100万円以下の罰金とされています。益獣として保護されているため、よほどのことがなければ駆除はできないと考え、「追い出してふさぐ」ことに徹するのが基本です。
なお、自治体の対応もさまざまです。市では駆除や捕獲をしておらず自己対応が求められる例(大津市)があり、その場合は、ペストコントロール協会などの専門業者に相談する形で、費用は自己負担になります。
駆除に向いた時期と避けたい時期
駆除(追い出し)は、7月初旬〜8月中旬の繁殖期と、冬眠の時期を避けるのが基本です。繁殖期に入ると追い払うのは難しく、親が戻れなくなって子どもだけが取り残されるおそれもあります。編集部としては、これらの時期を外した春や秋に、夜の出入りを確認しながら進める方法をおすすめします。
追い出してもまた戻ってきたときの対処
壁面のコウモリを追い払っても、追い払うだけでは戻ってくることが多いとされています。再び戻ってきた場合は、見落としたすき間が残っていないかを、夕方の出入りを観察しながら確認しましょう。6mmほどのわずかな穴からも出入りできるため、換気口や屋根と壁の境目、戸袋まわりなどを重点的に再点検し、金網やパテで補強します。
自分での対策が難しい・改善しない場合は業者へ


追い出しても戻ってくる、侵入口が高所や屋根裏で自分では届かない、数十匹が住みついている、といった場合は、自力での対応が難しい状況です。高所作業や広範囲の閉塞、多数の個体が生息している場合は協会などへ相談するよう、神奈川県ペストコントロール協会も勧めています。
- 追い出しても、数日〜数週間のうちにまた戻ってくる
- 侵入口が高所・屋根裏などで、自分では安全に作業できない
- フンや尿が広範囲に溜まり、臭いやシミが取れない
- 数十匹が住みついているなど、規模が大きい
専門業者に依頼すると、出入り口の調査から追い出し、封鎖、フンの除去・消臭・消毒までまとめて対応してもらえます。ただし、害虫・害獣駆除のトラブルは増えており、国民生活センターの発表では、2023年度の相談件数は前年度の同じ時期と比べて約1.5倍に増加し、とくに10〜20歳代が契約当事者となるケースが急増したとされています。
極端に安い価格表示には注意し、複数社から見積もりを取って比較すること、納得できないときはクーリング・オフ制度や消費者ホットライン「188」を活用することが呼びかけられています。作業範囲(封鎖・清掃・消毒が含まれるか)と総額を、契約前に必ず確認することが、納得できる依頼につながります。



コウモリ対応は「追い出し」「封鎖」「清掃・消毒」と作業が多段階になります。見積もりの比較では、どこまで含まれているかを揃えて見ると、金額の違いに納得しやすくなりますよ。
よくある質問
Q. イエコウモリを自分で駆除(捕獲・殺処分)してもいいですか?
A. 鳥獣保護管理法により、許可なく捕獲・殺傷することはできません。違反すると1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科される可能性があるため、追い出してすき間をふさぐ方法で対応しましょう。
Q. イエコウモリとアブラコウモリは違う種類ですか?
A. 同じ種類です。一般的な和名はアブラコウモリで、人家の周辺のみで活動することからイエコウモリとも呼ばれます。
Q. コウモリはどのくらいのすき間から入ってきますか?
A. 6mmほどのわずかなすき間からも出入りできるとされています。外壁のすき間や換気口、戸袋まわりなどを細かく点検し、4メッシュの金網やパテでふさぎましょう。
Q. コウモリのフンとネズミのフンは、どう見分けられますか?
A. コウモリのフンは、内容物が昆虫の表皮や脚などで、ときどきコウモリの毛が混じります。ネズミのフンには、ネズミの毛が見つかる点が異なります。判断に迷う場合は専門業者に確認してもらいましょう。
Q. 市役所に頼めば、コウモリを駆除してもらえますか?
A. 自治体によって対応は異なります。市では駆除や捕獲を行っておらず、専門業者への相談(費用は自己負担)を勧められる例もあります(大津市)。
イエコウモリ(アブラコウモリ)は鳥獣保護管理法で守られており、よほどのことがなければ駆除はできないため、「追い出して、すき間をふさぐ」のが基本です。6mmほどのすき間からも出入りできるので、夜に外出したあと金網やパテで確実にふさぎ、繁殖期(7月初旬〜8月中旬)や冬眠の時期は避けましょう。フンには素手で触らず、高所作業や多数の個体がいる場合は無理をせず、料金トラブルにも注意しながら複数の業者を比較して相談することをおすすめします。










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