庭木や軒下にハチの巣を見つけたとき、「業者に頼むほどでもないし、自分で何とかできないか」と考える人は少なくありません。実際、巣の種類や大きさによっては自分で対応できるケースもありますが、判断を誤ると重大な事故につながることもあります。この記事では、国や自治体が公表しているデータをもとに、自分でハチの巣を駆除する際の見極めポイントと正しい手順を解説します。
- 福島県郡山市消防本部の統計では、ハチ刺されによる救急搬送は9月が最多で、全体の約3割を占める
- 自分で駆除できるかどうかは、蜂の種類・巣の大きさ・設置場所・自分の体質によって判断が分かれる
- 我孫子市などの自治体は、自分で駆除する場合の服装や時間帯について具体的な指針を示している
- スズメバチや高所・閉鎖空間の巣は、自分での駆除を避けるべきケースとされている
ハチに刺される事故は毎年どれくらい起きているのか

全国的な被害の実態
「自分で駆除するくらい大丈夫だろう」と思う前に知っておきたいのが、ハチによる被害の規模です。厚生労働科学研究成果データベースの資料によれば、ハチによる刺症事故の年間死亡者数は平均40名、多い年には70名を超えるとされています。これは自然災害による死者数を上回ることもある数字で、決して他人事とはいえません。
郡山市消防本部が公表する救急搬送データ
福島県郡山市消防本部が公表している資料によると、2020年から2024年までの5年間で、ハチ刺されによる救急搬送人員は307人にのぼります。月別では9月が91人(29.6%)で最多となり、8月の84人、7月の64人と続き、6月から10月の5か月間で年間の95.4%が発生しているとされています。自分で駆除しようと考えるなら、まさにこの時期が最も注意すべきタイミングだといえます。
| 月 | 搬送人員 | 割合 |
|---|---|---|
| 6月 | 11人 | 3.6% |
| 7月 | 64人 | 20.8% |
| 8月 | 84人 | 27.4% |
| 9月 | 91人 | 29.6% |
| 10月 | 43人 | 14.0% |
| その他の月 | 14人 | 4.6% |
年代別では70歳代が29.3%で最も多く、60歳以上が全体の66.1%を占めていることも報告されています。また、刺された状況としては「草刈り・剪定・伐採」中が41.7%と最多で、庭仕事の最中に気づかず巣に近づいてしまうケースが多いことがうかがえます。傷病程度は軽症が80.5%を占める一方、重症が1.0%、死亡も0.3%発生しており、自分で対応する際にも油断は禁物です。
- 年代別:70歳代29.3%(最多)/60歳以上の合計66.1%
- 状況別:草刈り・剪定・伐採中41.7%(最多)/その他屋外30.0%
- 傷病程度:軽症80.5%/中等症18.2%/重症1.0%/死亡0.3%
編集部庭仕事の最中にうっかり刺されるケースが一番多いんです。自分で駆除する・しないにかかわらず、まずは巣の存在に気づくことが第一歩です。
自分で駆除できるかどうかの見極めポイント
すべてのハチの巣が自分で対応できるわけではありません。ここでは、自分で駆除するかどうかを判断する際にチェックしておきたい3つのポイントを紹介します。
蜂の種類と巣の大きさ
相模原市が公開している情報では、比較的おとなしいアシナガバチについては自分での駆除が想定されている一方、攻撃性の高いスズメバチは巣が大きくなるにつれて危険性が増すため、専門業者への依頼が強く推奨されているとされています。ミツバチも巣が大きい場合は数千匹規模になることがあり、素人が対応するのは現実的ではありません。まず「何蜂の巣なのか」を見極めることが、自分で駆除できるかどうかを判断する最初のステップになります。
| 蜂の種類 | 自分での対応 | 理由 |
|---|---|---|
| アシナガバチ | 可能な場合が多い | 比較的おとなしく、攻撃性が低い |
| スズメバチ | 基本的に業者へ | 攻撃性が高く、巣が大きいほど危険 |
| ミツバチ | 規模による | 巣が大きいと数千匹規模になることも |
巣の場所と時間帯
巣が屋根裏や天井裏、壁の中など閉鎖的な空間にある場合、巣の全体像が見えないため、駆除の途中でハチが室内に逃げ込んだり、想定より規模が大きかったりするリスクがあります。また、脚立を使わないと届かない高所の巣も、作業中にハチに反撃されてバランスを崩す危険があるため、自分での対応には向きません。「目視で巣全体が確認できる」「高所作業が不要」という2点を満たさない場合は、無理をせず業者に相談するのが安全です。
自分の体質(アレルギーの有無)
相模原市の情報では、蜂アレルギーの体質を持つ人や、アレルギー傾向がある人は自分での駆除の対象から外れるとされています。過去にハチに刺されたことがある人は、体内に抗体ができていることで、再び刺された際にアナフィラキシーショックを起こすリスクが高まるといわれています。少しでも不安がある場合は、自分で駆除を試みず、最初から業者に依頼することをおすすめします。
- 蜂の種類がアシナガバチである(スズメバチ・ミツバチは基本的に業者へ)
- 巣が目視できる場所にあり、高所作業が不要である
- 蜂アレルギーがなく、過去に刺された経験がない
自分で駆除する際の服装・道具のポイント
推奨される服装と時間帯


自分で駆除する場合は長袖長ズボン・軍手・帽子を着用し、できるだけ皮膚の露出を避けたうえで、首にタオルを巻くことが推奨されています。服の色についても、黒っぽい色は蜂を刺激しやすいため避け、白色系の服装を選ぶことが望ましいとされています。なお駆除費用については、自治体によっては業者への依頼費用の一部を補助する制度もあり、例えば茨城県神栖市では駆除費用(消費税込み)の2分の1(上限10,000円)を補助する制度が設けられています。
- 長袖・長ズボン(白色系がおすすめ、黒っぽい色は避ける)
- 軍手
- 帽子
- 首に巻くタオル
- 殺虫スプレー(巣から数メートル離れて噴射できるもの)
ハチの活動が鈍る夜間に駆除されると比較的安全です。(日中、巣の位置や大きさなどを確認しておきましょう)
我孫子市公式ウェブサイトより
駆除後のハチの死骸も腹部に触れると刺されることがあるため、作業が終わったあとの扱いにも注意が必要です。
防護服の貸出しサービス
市役所や地区センターで防護服を無償で貸し出すサービスを実施しており、予約制で最大2日間借りられるとされています。防護服を着用していても事故を完全に防げるわけではない点は押さえておく必要があります。自分の自治体でも同様の貸出しサービスがないか、事前に確認しておくとよいでしょう。
蜂の毒針が刺さりにくい構造となっておりますが、絶対に刺されないとは言い切れません。
入間市公式ウェブサイトより
※対応エリア・料金・保証内容をまとめて確認できます
刺されてしまった場合の応急処置


自分で駆除する際に万が一刺されてしまった場合は、まずその場から離れて安全を確保することが最優先です。作業中にハチが興奮していると、次々に攻撃してくることがあるため、慌てず低い姿勢のまま速やかにその場を離れましょう。
安全な場所に移動したら、傷口を指でつまんで毒を絞り出しながら、きれいな水で洗い流します。口で毒を吸い出す方法は、口の中の傷から毒が回るリスクがあるため避けましょう。洗浄後は患部を冷やし、抗ヒスタミン軟膏があれば塗布します。発疹・吐き気・呼吸困難・めまいなどの症状が出た場合は、様子を見ずに直ちに救急車を要請するか、医療機関を受診してください。過去に刺された経験がある人ほど、症状が重くなりやすいとされているため、特に注意が必要です。
- その場から静かに、かつ速やかに離れる
- 傷口を指でつまんで毒を絞り出し、きれいな水で洗い流す(口で吸い出さない)
- 患部を冷やし、抗ヒスタミン軟膏があれば塗布する
- 発疹・吐き気・呼吸困難・めまいなどの症状が出たら、直ちに救急車を要請する
駆除した巣の処分方法と再発防止のポイント
巣を駆除したあとも、そのまま放置してよいわけではありません。殺虫剤が十分に効いてハチの動きが完全に止まったことを確認してから、巣を取り除いて密閉できる袋に入れて処分するのが基本です。市区町村によってごみの分別区分が異なるため、処分前に自治体のルールを確認しておくと安心です。
また、一度巣を作られた場所は、翌年以降も別の蜂が巣を作りやすい傾向があるとされています。巣があった場所には市販の忌避スプレーを吹きかけておく、軒下や換気口などの隙間をネットでふさぐといった対策をしておくと、再発の防止につながります。定期的に家の周りを見回り、小さな巣のうちに気づけるようにしておくことも大切です。
- 巣があった場所に市販の忌避スプレーを吹きかけておく
- 軒下・換気口などの隙間をネットでふさぐ
- 春先から定期的に家の周りを見回り、小さな巣のうちに気づく



駆除して終わりではなく、その後のひと手間が「毎年同じ場所に巣ができる」を防ぐコツです。
自力で駆除する場合の流れ・方法
自分でハチの巣を駆除するのは危険を伴うため、基本的には専門業者に依頼することをおすすめします。以下はあくまで参考情報であり、実行を推奨するものではありません。
前の章で紹介した見極めポイント(蜂の種類・巣の大きさ・設置場所・自分の体質)をすべてクリアし、それでも自分で対応すると判断した場合に限り、以下の流れが参考になります。1つでも当てはまらない項目がある場合は、無理をせず業者に相談してください。
- 服装と道具を準備する:長袖・長ズボン・軍手・帽子など肌の露出を抑えた白系の服装を用意し、首にタオルを巻く。殺虫スプレーは巣から数メートル離れて噴射できるものを選ぶ
- 時間帯を選んで巣の位置を確認する:日中のうちに巣の位置・大きさ・種類を確認し、ハチの活動が鈍る夜間に、周囲に人がいないことを確かめてから作業に入る
- 巣を駆除・撤去して処分する:巣全体に十分な時間スプレーを噴射し、ハチの動きが完全に止まったことを確認してから巣を取り除き、密閉した袋に入れて処分する
噴射後すぐに巣へ近づいたり、暗闇の中で作業したりすると、興奮したハチに反撃されるリスクが高まります。作業中に少しでも「思っていたより巣が大きい」「別の場所にも巣がある」と感じたら、その場で中断し、専門業者に切り替える判断も必要です。
自分での対策が難しい・改善しない場合は業者へ


スズメバチの巣や、高所・閉鎖空間にある巣は、自分で安全に駆除するのが難しいケースが多く、少しでも不安がある場合は専門業者への相談を検討しましょう。自分で対応を試みたものの巣を取りきれなかった、ハチの活動が収まらないといった場合も、無理を重ねずに業者へ切り替えることをおすすめします。専門業者であれば、蜂の種類の正確な判別から、防護服や専用機材を使った安全な駆除、再発を防ぐための処理まで、一連の対応をまとめて任せられるという利点があります。
- スズメバチの巣、または種類の判別に自信がない
- 屋根裏や壁の中など、巣全体が見えない場所にある
- 蜂アレルギーの体質、または過去に刺された経験がある
- 自分で対応してもハチの活動が収まらない
専門業者に依頼すれば、巣の種類の見極めから安全な駆除、再発防止のアドバイスまでまとめて任せられます。無料で見積もり・相談に対応している業者も多いため、判断に迷ったら、早めに複数社へ相談して比較することをおすすめします。
※料金・対応エリア・保証をまとめてチェックできます
よくある質問
Q. アシナガバチとスズメバチ、どちらも自分で駆除できますか?
A. 相模原市の情報では、比較的おとなしいアシナガバチは自分での駆除が想定されている一方、攻撃性の高いスズメバチは専門業者への依頼が強く推奨されています。巣が大きくなるほど危険性は増すため、種類の判別に自信がない場合は業者に相談しましょう。
Q. 自分で駆除するのに適した時間帯はいつですか?
A. 我孫子市の情報では、日中に巣の位置や大きさを確認したうえで、ハチの活動が鈍る夜間に作業すると比較的安全とされています。ただし暗闇での作業は視界が悪くなるため、懐中電灯などで足元を確保しつつ慎重に行う必要があります。
Q. 防護服は必ず必要ですか?
A. 必須ではありませんが、あると安全性は高まります。入間市のように防護服を無償で貸し出す自治体もあるため、自分の自治体に同様のサービスがないか確認するとよいでしょう。ただし防護服を着用していても刺されないとは限らない点には注意が必要です。
Q. 駆除費用に使える補助金はありますか?
A. 自治体によっては、業者へ依頼した駆除費用の一部を補助する制度があります。例えば神栖市では駆除費用の2分の1(上限10,000円)が補助対象です。対象条件は自治体ごとに異なるため、事前に確認することをおすすめします。
ハチの巣を自分で駆除できるかどうかは、蜂の種類・巣の大きさ・設置場所・自分の体質によって判断が分かれます。条件を満たさない場合や少しでも不安がある場合は、無理をせず専門業者に相談するのが安全です。国や自治体のデータからも、ハチによる事故は決して少なくないことがわかっています。判断に迷ったら、まずは複数の業者に相談・見積もりを取り、安全に対応することをおすすめします。
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