庭木の洞や屋根裏から、日が暮れてもハチの羽音が聞こえてくる……そんなときに疑いたいのがモンスズメバチです。他のスズメバチと違い、暗くなっても活動を続けるという珍しい性質を持つ種類で、正しい知識がないまま近づくと思わぬ事故につながります。この記事では、国や自治体・研究機関が公表している資料をもとに、モンスズメバチの巣の特徴や危険性、正しい対処法を解説します。
- 森林総合研究所の資料では、スズメバチ刺傷による死亡事故は全国で毎年数十件発生し、8〜9月に集中する
- 愛媛県のレッドデータブックによると、モンスズメバチは閉鎖空間に営巣し、攻撃性はかなり強いとされる
- 他のスズメバチと異なり、明るさが確保されれば夜間も活動する珍しい性質を持つ
- 近年は個体数が減少している地域もあるが、危険性が下がったわけではない
モンスズメバチとは?

基本情報(分類・分布・大きさ)
モンスズメバチは、スズメバチ科スズメバチ属に分類されるハチの一種です。愛媛県のレッドデータブックによると、北海道から九州にかけて広く分布しており、体の大きさはコガタスズメバチとほぼ同等とされています。外見上の特徴として、前胸背板の上面や腹部の一部が赤褐色を帯びる点が挙げられます。
他のスズメバチにはない生態的な特徴
森林総合研究所が公表している資料によると、モンスズメバチは樹洞や建物内部など閉鎖的な空間に営巣し、巣が大きくなると別の場所へ引っ越しをする習性があるとされています。食性にも特徴があり、セミやトンボなど大型の昆虫を好んで狩るほか、樹液にも集まるとされており、他のスズメバチとは異なる生活スタイルを持つことがわかります。そして最大の特徴が、他のスズメバチと異なり、明るさが確保されれば夜間も活動するという珍しい性質です。街灯や玄関灯の近くなど、夜間でも明るい場所では時間帯にかかわらず注意が必要です。
閉鎖空間に営巣し、攻撃性はかなり強い。明るさが確保されれば夜間も活動する。
愛媛県レッドデータブック「モンスズメバチ」より
スズメバチによる刺傷被害はどれくらい起きているのか
「モンスズメバチはあまり聞かない種類だから大丈夫」と考えるのは早計です。森林総合研究所が公表している資料によれば、スズメバチ刺傷による死亡事故は全国で毎年数十件発生しており、被害は8月・9月に集中しているとされています。アナフィラキシーショックによる死亡例の多くは、刺されてから1時間以内に発生するとも報告されており、応急処置の初動が命を左右します。
ハチ刺され事故は8,9月に集中している。(アナフィラキシーによる死亡例の多くは、刺されてから1時間以内に発生)
森林総合研究所「森林レクリエーションでのスズメバチ刺傷事故を防ぐために」より
編集部「あまり聞かない種類だから」という油断こそ、一番の落とし穴かもしれません。名前の知名度と危険度は必ずしも一致しません。
モンスズメバチの毒性・危険性
前の章で紹介した通り、モンスズメバチは閉鎖空間に営巣し、攻撃性はかなり強い種とされています。屋根裏や樹洞など目につきにくい場所に巣を作るため、気づかないうちに巣に近づいてしまい、刺激して攻撃を受けるケースが起こりやすい点が特に注意すべきポイントです。
前述の通り、スズメバチ類全体で見ると、刺傷による死亡事故は全国で毎年数十件発生しており、アナフィラキシーショックは刺されてから1時間以内に起こることが多いとされています。モンスズメバチ単体の死亡統計は公表されていないものの、攻撃性の強さと閉鎖空間での営巣という特徴を踏まえると、他のスズメバチと同様に十分な警戒が必要な種類だといえます。
モンスズメバチの分布と生息状況の変化
愛媛県のレッドデータブックでは、モンスズメバチは北海道から九州にかけて広く分布している一方、かつては普通種だったが、現在は各地で個体数が減少していると報告されています。その主な要因として、営巣期の主食であるハルゼミが松枯れの影響で減少したことが指摘されています。身近な自然環境の変化が、思わぬ形でハチの生息状況にも影響していることがうかがえます。個体数が減っている地域があるからといって、危険性が下がったわけではない点には注意が必要です。
モンスズメバチとほかのスズメバチの見分け方


自分で駆除できるかどうかを判断する上でも、まず「何スズメバチなのか」を見極めることが重要です。モンスズメバチは前胸背板の上面や腹部の一部が赤褐色を帯びるのが特徴で、体格はコガタスズメバチとほぼ同等とされています。よく似た種類との違いを、体の特徴・営巣場所・活動時間の観点から整理すると次のようになります。
| 種類 | 体色・特徴 | 営巣場所 | 活動時間 |
|---|---|---|---|
| モンスズメバチ | 前胸背板・腹部の一部が赤褐色 | 樹洞、家屋の閉鎖空間 | 日中〜夜間(明るい場所) |
| コガタスズメバチ | モンスズメバチとほぼ同大 | 軒下、生垣、樹木の枝 | 日中のみ |
| キイロスズメバチ | 全体的に黄色みが強い | 屋根裏、軒下、樹木 | 日中のみ |
種類の判別に少しでも自信が持てない場合は、無理に近づいて確認しようとせず、離れた場所から写真を撮って専門業者に相談するのが安全です。特にモンスズメバチは閉鎖空間に営巣するため巣の全体像が見えにくく、種類の見誤りが起こりやすい点に注意しましょう。
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巣を放置するとどうなるか
「まだ小さいから」「気づかなければ大丈夫」と巣を放置してしまうと、状況は悪化していきます。女王バチ1匹から始まった巣も、夏から秋にかけて働きバチの数が急激に増え、数十匹〜百匹規模に成長することがあります。巣が大きくなるほど、モンスズメバチは前述の通り別の場所へ引っ越しをすることもあり、いつの間にか巣の位置や数が把握できなくなるケースも少なくありません。
また、閉鎖空間に営巣する性質上、屋根裏や壁の中で気づかないうちに巣が拡大し、気づいたときには手の届かない規模になっていることも珍しくありません。巣が大きくなるほど駆除の難易度も費用も上がる傾向があるため、巣を見つけたらできるだけ早い段階で対応を検討することが、結果的に安全性と費用の両面で有利になります。なお駆除費用については、自治体によっては業者へ委託した駆除費用の一部を補助する制度もあり、例えば埼玉県熊谷市では駆除費用(上限10,000円)を補助する制度が設けられています(事業用の建物や活動のない巣は対象外、駆除実施から60日以内の申請が必要とされています)。
自力で駆除する場合の流れ・方法
自分でモンスズメバチの巣を駆除するのは危険を伴うため、基本的には専門業者に依頼することをおすすめします。以下はあくまで参考情報であり、実行を推奨するものではありません。
巣がまだ数センチ程度で、女王バチ一匹しかいないごく初期の段階に限り、自分で対応するという選択肢もあります。ただし、屋根裏や樹洞など巣の全体が確認できない場所にある場合や、夜間の活動が確認できる場合は、自力での駆除は避けるべきです。あくまで「ごく初期の小さな巣が、目視できる場所にある」場合に限った方法として、基本的な流れを押さえておきましょう。
- 服装を整える:長袖・長ズボン・帽子など肌の露出を抑えた白系の服装を用意し、殺虫スプレーは巣から数メートル離れた位置から噴射できるものを選ぶ
- 時間帯を選ぶ:モンスズメバチは明るければ夜も活動するため、日中でも早朝などハチの動きが比較的鈍い時間帯を選び、周囲に人がいないことを確認してから作業に入る
- 巣を駆除・撤去する:巣全体に十分な時間スプレーを噴射し、ハチの動きが完全に止まったことを確認したうえで巣を取り除き、密閉した袋に入れて処分する
噴射後すぐに巣へ近づいたり、屋根裏など逃げ場のない閉鎖空間で作業したりすると、興奮したハチに反撃されるリスクが高まります。少しでも巣の全体が見えない、あるいは種類の判別に自信が持てない場合は、無理をせず専門業者に任せるのが安全です。
自分での対策が難しい・改善しない場合は業者へ


樹洞や屋根裏にできた巣は、自分で安全に駆除するのが難しいケースが多く、自己判断での対応に不安がある場合は専門業者への相談を検討しましょう。特に暗くなってからも活動する可能性がある点を踏まえると、自己判断での対応にはリスクが伴います。専門業者であれば、種類の正確な判別から、防護服や専用機材を使った安全な駆除、再発を防ぐための処理まで、一連の対応をまとめて任せられるという利点があります。
- 屋根裏や樹洞など、見えにくい場所に巣がある
- モンスズメバチかどうか、種類の判別に自信がない
- 夕方以降もハチの活動が確認できる
- 自分で対応してもハチの活動が収まらない
専門業者に依頼すれば、巣の種類の見極めから安全な駆除、再発防止のアドバイスまでまとめて任せられます。無料で見積もり・相談に対応している業者も多いため、巣を見つけたら、早めに複数社へ相談して比較することをおすすめします。
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よくある質問
Q. モンスズメバチはどんな場所に巣を作りますか?
A. 樹洞や家屋内部など閉鎖的な空間を好んで営巣します。巣が大きくなると別の場所へ引っ越しをする性質もあるため、シーズン中に営巣場所が変わることがあります。
Q. モンスズメバチは本当に夜も活動するのですか?
A. 愛媛県のレッドデータブックによると、明るさが確保されれば夜間も活動するとされています。街灯や玄関灯の近くでは、時間帯にかかわらず注意が必要です。
Q. モンスズメバチと他のスズメバチはどう見分ければよいですか?
A. モンスズメバチは前胸背板や腹部の一部が赤褐色を帯び、体格はコガタスズメバチとほぼ同等とされています。判別に自信がない場合は、離れた場所から写真を撮って業者に相談するのが安全です。
Q. 巣の駆除に使える補助金はありますか?
A. 自治体によっては駆除費用の一部を補助する制度があります。例えば熊谷市では駆除費用の上限10,000円が補助対象ですが、対象条件は自治体ごとに異なるため事前確認をおすすめします。
モンスズメバチは樹洞や家屋の閉鎖空間に営巣し、他のスズメバチと違って明るさがあれば夜間も活動する珍しい性質を持っています。攻撃性はかなり強いとされ、個体数が減少している地域があるとはいえ油断はできません。樹洞や屋根裏で巣が疑われる場所を見つけたら、時間帯にかかわらず無理に近づかず、自治体の補助制度も確認しながら、複数の業者を比較して安全に対応することをおすすめします。
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