雨上がりの夜、玄関や外壁に細長い虫がびっしり集まっているのを見つけて、「ムカデかもしれない」とぎょっとした経験はないでしょうか。ヤスデはムカデに似ていますが、人を咬んだり刺したりすることはなく、対処の仕方もまったく異なります。この記事では、ヤスデの特徴・ムカデとの違い・大量発生する時期から、具体的な退治方法、自力対応の流れ、絶対にやってはいけない駆除法、家の中への侵入予防までをまとめて解説します。
- ヤスデは咬んだり刺したりせず、腐った植物を食べる「掃除屋」。ムカデは肉食で、咬まれると激しく痛む
- ヤスデは湿度の高い雨上がりの夜によく見られ、年2回(4〜6月・10〜11月)に集団移動する
- 退治は「ほうきで掃き集める」「日光に当てる」「テープでバリアを作る」を組み合わせ、落ち葉除去などの環境整備も行う
- 熱湯をかける・焼くのは絶対NG。有毒なガスや悪臭が出て、健康被害の恐れがある
ヤスデの特徴と発生原因

ヤスデは有機物が多い湿った場所に生息する土壌動物で、落ち葉の分解に重要な役割を果たしています。住宅地で集団発生しているのは、台湾原産の外来種「ヤンバルトサカヤスデ」で、成体の体長は約3〜3.5センチメートル、体色は褐色で淡褐色と濃褐色の縞模様があります。寿命は約1年で、卵→幼虫→亜成体→成虫と脱皮を繰り返しながら成長します。
発生原因としては、土や堆肥、植木などの移動に卵や幼虫が付着して運ばれる人為的な要因が最も大きいとされています。自然環境では、湿度の高い草地や落ち葉の多い土壌、日光の当たらない道端の側溝などを好むため、こうした場所が近くにあると発生しやすくなります。
編集部「急に壁一面にヤスデがいてびっくりした」という声は、雨が続いたあとに特に増えます。まずは、実際の駆除作業の様子から見てみましょう。


こちらは、外壁や階段に集まった個体をほうきで掃き集め、袋にまとめて処分している場面です。ヤスデは刺激を受けると丸まる習性があるため、この性質を利用するとまとめて集めやすくなります。



数が多い現場では、掃き集める作業と並行して、どこから登ってきているかを確認するのがコツです。侵入ルートを押さえておくと、掃いても掃いても戻ってくるという状況を防ぎやすくなります。
ところで、「これはヤスデなのか、それともムカデなのか」と迷う方も多いはずです。次の章で、見分け方と危険性の違いを整理します。
ヤスデとムカデの違い


| 比べるポイント | ヤスデ | ムカデ |
|---|---|---|
| 食べるもの | 腐った植物を食べて分解する | 昆虫などを捕食する |
| 咬む・刺す | 咬まない・刺さない | 咬まれると激しく痛み、炎症を起こす |
| 刺激したとき | 体表から有害な分泌物を出す | 咬みついて防御する |
| 動き | ゆっくり歩く。丸まることがある | 素早く動き回る |
| 危険度 | 咬傷の心配はないが、触れすぎや刺激に注意 | 咬傷に注意が必要 |
ヤスデとムカデは見た目が似ていますが、最大の違いは「咬むかどうか」と「何を食べるか」です。ヤスデは腐った植物を食べて分解する益虫としての側面があり、人を咬みません。一方のムカデは、倒木や落ち葉の下に潜み、そこにいる昆虫などを捕食する肉食の虫で、咬まれると激しく痛み、炎症を起こします。
見た目と動きで見分けるポイント
見た目の違いとして、ヤスデは1つの体節に脚が2対ずつ生えているのに対し、ムカデは1つの体節に脚が1対ずつです。ヤスデは円筒形のずんぐりした体つきで、脚は短く、ゆっくり歩きます。刺激を受けると体を丸めることがあるのも特徴です。ムカデは平たい体で、1対の長い脚が体の左右に張り出し、素早く走り回ります。
人への害・危険性の違い
人への害の面では、ヤスデは咬んだり刺したりして人体に影響を与える虫ではありません。ただし、強い刺激を受けると体表から有害な分泌物を出します。素手でつかんだり、つぶしたりすることは避けたほうが安心です。ムカデは、うっかり触れると咬まれて強い痛みや腫れが出ることがあるため、見つけたら必ず道具を使って対処する必要があります。
間違えて対処するとどうなる?
ヤスデをムカデと勘違いして熱湯をかけたり火であぶったりすると、後述するように悪臭や有毒なガスが発生することがあります。逆に、ムカデをヤスデだと思って素手で触れると咬まれる危険があります。種類の判断に自信がないときは、直接触れずに距離を取り、動きの速さと体つきを観察して見分けるようにしましょう。



見分けに迷ったときは、「ゆっくり歩いて丸まるならヤスデ、素早く走って逃げるならムカデ」と覚えておくと判断しやすくなります。どちらか分からない場合は、まず触らないことが基本です。
ヤスデが大量発生する時期と天気
ヤスデの集団移動は、年2回、4〜6月の幼虫期と10〜11月の成虫期に発生するとされ、湿度の高い雨上がりの夜によく見られます。地域によっても時期は異なり、静岡県では10〜12月を中心に亜成体と成体が混在した集団移動が起こり、一部で4月以降にも成体の移動が見られると報告されています。
そのため、梅雨どきと秋の長雨のあとは、玄関や外壁、階段まわりを事前に確認しておくと安心です。シーズンに入る前に落ち葉を片付けたり、壁にテープを貼ったりしておけば、大量発生に慌てずに対応しやすくなります。
放置するとどうなる?大量発生のリスク
ヤスデを見つけても「害はないから」と放置していると、1匹あたり200個ほどの卵を産むため、次のシーズンにさらに数が増えてしまうことがあります。成虫を駆除するだけで発生源の環境を放置していると、繰り返し同じ被害に悩まされることになりかねません。
成虫駆除だけでなく、落ち葉などを綺麗にしていく環境整備も併せて行うのが効果的である。ヤスデ一匹が200個ほどの卵を産むため、卵塊を産ませない環境づくりが重要となる。
葉山町「ヤスデの生態と対策の勉強会 質疑応答」
ヤスデは家屋そのものに深刻な被害を与える害虫ではありませんが、大量発生すると玄関先や外壁を埋め尽くすほどの数になり、生活に支障が出ることもあります。扉の隙間などから室内に侵入するケースもあるため、数が少ないうちに対処しておくことが被害を抑えるポイントです。
ヤスデの退治方法
| 方法 | 具体的な内容 | 特徴 |
|---|---|---|
| ほうきで掃き集める | 刺激を与えて丸くなったところをまとめて集める | 薬剤を使わず手軽に大量処理できる |
| 日光に当てて処理する | ごみ袋に集めて日光に当てる | 数時間で死滅させられる |
| テープでバリアを作る | 塀や壁に滑りやすい養生テープなどを貼る | 侵入・登はんを継続的に防げる |
| 発生源の環境を整える | 落ち葉や下草を除去し、日当たりを良くする | 発生数そのものを減らせる |
ヤスデの退治は、「ほうきで掃き集める」「日光に当てて処理する」「テープでバリアを作る」「発生源の環境を整える」という4つの方法を、発生状況に応じて組み合わせるのが効果的です。それぞれのやり方を見ていきましょう。
ほうきで掃き集めて退治する方法
ヤスデは刺激を受けると一時的に丸くなる習性があるため、ほうきなどではたくと集めやすくなります。集めた個体はごみ袋にまとめ、漏れ出ないようにきつく縛って処分してください。毎朝ほうきで掃いて駆除する方法を習慣にしている家庭も多く、実用的な対策として知られています。
日光に当てて処理する方法
掃き集めた個体を袋に入れて日光の当たる場所に置いておくと、数時間で死滅させられるとされています。袋に入れて日光に当てておくと、ヤスデ自身が出す分泌物で自滅するともいわれており、薬剤を使わずに処理できる点がメリットです。処理後は、燃やすごみとして出してください。
テープでバリアを作る方法
塀や壁面に滑りやすい材質(養生テープ・アルミテープ・ステンレス材など)を貼ると、ヤスデが登れずに侵入を防ぎやすくなります。幅50ミリ程度のテープを使い、1本では効果が弱い場合は2本貼って太くする、汚れたら拭き取ったり貼り替えたりすると効果を保てます。
落ち葉や下草を除去して発生源を断つ方法
発生源対策の基本は、草払いや下草刈りで日当たりを良くし、暗く湿った場所をなくすことです。側溝の落ち葉やごみも定期的に清掃しましょう。また、卵や幼虫は土や植木に付着して運ばれるため、根付きの植物などの持ち込み・持ち出しには注意が必要です。地域によっては、発生が多い場所に向けて薬剤(粒剤)の配布や噴霧器の貸出を行っている自治体もあるため、お住まいの市区町村の窓口に問い合わせてみるのもよいでしょう。



ほうきと日光は「今いる個体を減らす」対策、テープと環境整備は「これ以上増やさない」対策です。両方をセットで行うと、効果が長続きします。
自力で退治する場合の流れ・方法
ここで紹介する流れは、発生数が限られていて場所も特定しやすい場合を想定した参考情報です。玄関先や外壁を埋め尽くすほど大量発生している場合は、後述する業者への相談を優先してください。
熱湯をかけたり火であぶったりする方法は健康被害の恐れがあるため、絶対に行わないでください。以下はあくまで参考情報としての手順です。
- 外壁・玄関先・階段など、集まっていそうな場所を確認する
- ヤスデかムカデか、動きと体つきで見分ける(ムカデなら道具を使う)
- ほうきではたいて丸くなったところをごみ袋にまとめる
- 袋の口をきつく縛り、日光に当てて処理してから、燃やすごみに出す
- 壁に養生テープを貼り、落ち葉や下草を片付けて再発を防ぐ
掃いても掃いても数が減らない、近隣に大きな発生源があるといった場合は、無理をせず早めに業者へ相談することをおすすめします。
ヤスデ退治の注意点とポイント
ヤスデの退治では、やってはいけない方法、室内に入られたときの動き方、そもそも退治が必要かどうかの見極めの3つを押さえておくと、安全で無駄のない対応ができます。
熱湯・火であぶる駆除は絶対NG
「大量にいるから一気に熱湯をかけて処理したい」と考える方もいますが、ヤスデに熱湯をかけたり火であぶったりすると、シアン化合物を含むガスや悪臭が発生することが指摘されています。このガスを大量に吸い込むと、頭痛や吐き気、下痢といった健康被害が出ることがあるため、避けるべきとされています。
特に、大量発生した個体をまとめて熱湯処理しようとすると、発生するガスの量も多くなり、リスクがさらに高まります。退治する際は、ほうきでの掃き集めや日光に当てる方法、テープによるバリアなど、安全性が確認された方法を選びましょう。
家の中に入ってきたときの対処と侵入予防
ヤスデは、扉やサッシの隙間から室内に入り込むことがあります。室内で見つけた場合も、基本は屋外と同じで、ほうきやちりとりで集めて袋に入れ、口を縛って処分します。つぶすと分泌物や臭いが出ることがあるため、素手で触らず、つぶさないように集めるのがコツです。
侵入を防ぐには、玄関や勝手口の扉の隙間をテープやすき間テープでふさぐことが有効です。あわせて、外壁には滑りやすいテープを貼り、玄関まわりの落ち葉やプランター下の湿った土を片付けておくと、集団移動の時期でも室内への侵入を減らせます。薬剤を使う場合は、農地や水路には使わないなど、使用する場所に配慮してください。
ヤスデは益虫?退治しなくていいケース
ヤスデは落ち葉や腐った植物を食べて分解する「土の掃除屋」としての役割を持つ益虫でもあります。庭の隅や植え込みの中など、人の生活動線から離れた場所で少数が見られる程度であれば、無理に退治する必要はありません。咬んだり刺したりもしないため、家の中に入ってこなければ共存できるケースもあります。
一方で、玄関先・外壁・室内など、生活空間に大量に集まる場合は退治や侵入防止の対象と考えるのが現実的です。「庭にいる分は様子を見る」「家のまわりに集まってきたら対処する」という線引きをしておくと、無理なく対応できます。
自分での対策が難しい・改善しない場合は業者へ


ほうきでの掃き集めやテープバリアを試しても被害が収まらない場合、近隣に大規模な発生源があり、自力での対処には限界がある可能性があります。改善が見られない場合は早めに専門業者への相談を検討しましょう。
- 毎日掃いても、翌日にはまた大量に集まっている
- 近隣に発生源となる湿地や空き地があり、自力での除去が難しい
- 扉の隙間などから室内まで侵入するようになった
- ヤスデかムカデか判断できず、触るのが不安
専門業者に依頼すると、発生源の特定から薬剤処理、侵入経路の対策、再発防止のアドバイスまで一貫して対応してもらえます。費用や作業内容は業者によって差があるため、1社だけで即決せず、複数社から見積もりを取って比較することをおすすめします。



種類の判断に迷う場合や、数が多くて手に負えないと感じたときは、早めにプロに見てもらうほうが結果的に手間も時間も節約できます。
よくある質問
Q. ヤスデとムカデはどう見分ければいいですか?
A. ヤスデは円筒形でゆっくり歩き、刺激を受けると丸まります。ムカデは平たい体で素早く走り回ります。ヤスデは咬みませんが、ムカデは咬まれると激しく痛むため、迷ったら触らずに距離を取ってください。
Q. ヤスデは人を咬んだり刺したりしますか?
A. 咬んだり刺したりすることはありません。ただし、強い刺激を受けると有害な分泌物や臭いを出すため、素手で触ったりつぶしたりするのは避けましょう。
Q. 熱湯をかけて退治してもいいですか?
A. 絶対に避けてください。シアン化合物を含むガスが発生し、大量に吸うと頭痛や吐き気などの健康被害が出る恐れがあります。
Q. なぜ雨上がりの夜にたくさん見かけるのですか?
A. ヤスデは湿度の高い環境を好み、雨上がりの夜に集団で移動する習性があるためです。年2回、4〜6月と10〜11月に移動が起こりやすい時期があります。
Q. 庭にいるヤスデも退治したほうがいいですか?
A. 庭の隅などで少数が見られる程度であれば、落ち葉を分解する益虫でもあるため、無理に退治する必要はありません。玄関先や室内に大量に集まる場合に対処するのがおすすめです。
ヤスデは咬んだり刺したりしない「土の掃除屋」で、肉食で咬まれると痛いムカデとは別の虫です。年2回、湿度の高い雨上がりの夜に集団移動するため、ほうきで掃き集めて日光に当てる、テープでバリアを作る、落ち葉や下草を片付けるといった方法を組み合わせて退治しましょう。熱湯や火は有毒なガスが出るため絶対に避け、大量発生して自力での対応が難しい場合は、早めに専門業者へ相談することをおすすめします。










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