アライグマは、なぜ「外来種」として全国で対策の対象になっているのでしょうか。もともと日本には生息していなかった動物が、なぜここまで広がり、どのような対策が進められているのかを知ることは、自宅の被害対策を考えるうえでも役に立ちます。この記事では、国や自治体のデータをもとに、アライグマが外来種とされる背景と、国・自治体・個人それぞれが行っている対策を詳しく解説します。
- アライグマはペットとして輸入された個体が逃げ出す・放されるなどして野生化し、外来種として定着した
- 外来生物法では「予防」「早期発見・完全排除」「管理」の3段階で対策を進めることになっている
- 東京都は平成25年に防除実施計画を策定し、51自治体が対策に取り組んでいる
- 対策の結果、生息数の回復が確認されている在来種もある
- 個人でできる対策は「入れない・捨てない・拡げない」の意識と、家に住み着かせない工夫が基本になる
アライグマはなぜ「外来種」なのか?日本に定着した経緯

アライグマはもともと北米原産の動物で、日本には生息していませんでした。環境省の資料によると、1970年代を中心にペットとして大量に輸入され、記録として残っている輸入数だけでも1962年に37頭、1977年に52頭、1979年に54頭にのぼります。
成長すると気性が荒くなり、飼育が難しくなったことから、飼いきれなくなった個体が逃げ出したり、飼い主に放されたりして野生化したケースが相次ぎました。天敵がほとんどいない日本の環境で個体数を増やし、1980年代以降、分布が急速に拡大していったとされています。
百聞は一見にしかず、ということで、実際にプロの駆除業者がどのように対応しているのか、先に見てみましょう。

実際の現場では、被害箇所の調査から捕獲、侵入経路の封鎖までを一連の流れとして行います。写真のように、糞尿の跡や体毛が残っている場所を細かく確認することで、見落としのない対策につながります。
駆除業者外来種対策は「今いる個体を減らす」だけでなく「新たに広げない」ことも同じくらい重要です。ご自宅の対策も、この2つの視点を意識すると効果が長続きします。
ここからは、国・自治体がどのような枠組みで対策を進めているのか、データとともに詳しく見ていきます。
外来生物法によるアライグマ対策の仕組み
アライグマは2005年に施行された外来生物法により「特定外来生物」に指定されました。環境省の手引きでは、外来種対策は侵入の段階に応じて3つの戦略で進めることとされています。
| 段階 | 対策の内容 |
|---|---|
| 未侵入の段階 | 侵入を予防するための監視体制づくり |
| 侵入初期の段階 | 早期発見と迅速な完全排除 |
| 定着・拡大した段階 | 段階的な捕獲による駆除・管理 |
すでに全国的に定着しているアライグマは、この3段階のうち「管理」の段階にあたります。対策の実施主体としては、国が防除の公示など制度の枠組みを整え、実際の捕獲などの防除活動は都道府県・市区町村や民間団体が担うという役割分担がとられています。広域的に移動する動物であるため、自治体単独ではなく、周辺地域と連携した対策が重視されている点も特徴です。
広域的な視点に基づく防除が重要であり、地方公共団体、民間団体等が防除の実施主体となる。
環境省「アライグマ防除の手引き」より
自治体のデータで見る対策の広がりと成果
広域で取り組む防除計画
ある都の環境局では、平成25年に「アライグマ・ハクビシン防除実施計画」を策定し、現在51の自治体がこの計画に基づいて対策に取り組んでいます。一つの自治体だけで対策をしても、隣接する地域から再び入り込んでしまうため、広域で足並みをそろえた捕獲・監視が行われています。
また、ある県では、防除の目標として「生息分布域の縮小」と「個体数の減少」を掲げ、県・市町村が主体となり、住民や施設管理者、農業者、研究機関などが連携して取り組む体制をとっています。地域住民が捕獲に協力する場合は、「捕獲等従事者」として届け出る仕組みも整えられています。
対策の成果として見えてきたもの
対策の効果を示すデータとして注目したいのが、在来種の回復状況です。ある里山保全地域では、アライグマなどによる捕食の影響を受けていたトウキョウサンショウウオについて、卵のうの確認数が平成22年度の510房から、令和7年度には748房まで回復したと報告されています。地道な防除活動が、生態系の回復という形で結果に表れつつあることがわかります。
外来種被害予防の3原則「入れない・捨てない・拡げない」


外来種対策というと自治体が行う捕獲活動のイメージが強いかもしれませんが、実は私たち一人ひとりの行動も、外来種被害を防ぐうえで大きな意味を持ちます。外来種問題への向き合い方としてよく知られているのが「入れない・捨てない・拡げない」という3つの原則です。
「入れない」は、そもそも野外に定着しかねない生き物をむやみに飼い始めない・持ち込まないこと。「捨てない」は、飼育している動物を最後まで責任を持って飼い、安易に野外に放さないこと。「拡げない」は、すでに野外にいる個体を別の地域に移動させたり、さらに増やしたりしないことを指します。アライグマが今のように広がった背景には、まさにこの原則が守られなかったという歴史があります。



「もう飼えないから」と野外に放す行為は、動物愛護管理法や外来生物法に違反する可能性もあります。ペットを迎える際は、最後まで飼いきれるかをしっかり考えることが大切です。
個人でできる外来種対策のポイント
自治体レベルの対策とは別に、家庭や身の回りでできる対策もあります。切り口別に整理します。
家に住み着かせないための対策
屋根裏や庭にアライグマを住み着かせないためには、エサになるものを片付け、侵入できるすき間をふさぐことが基本です。ペットフードや生ゴミの管理を徹底し、木の枝や配管など、屋根に上れる足場になるものは早めに剪定・撤去しておきましょう。
万が一遭遇したときの対応
庭先などでアライグマに遭遇しても、近づかない・触らない・エサを与えないを徹底してください。落ち着いてその場を離れ、被害状況とあわせて自治体の環境担当窓口に情報提供すると、地域全体の対策データとしても役立ちます。
むやみに広げないための意識
捕獲した個体を許可なく他の場所に移動させたり、逃がしたりすることは、外来生物法で禁止されています。自分の敷地から追い出せればよい、という発想ではなく、地域全体で個体数を減らすという視点を持つことが、結果的に再発防止にもつながります。
自力で対策する場合の流れ・方法
アライグマは特定外来生物のため個人での捕獲には許可が必要で、感染症のリスクもあります。自力での対応には限界があるため、基本的には専門業者への依頼をおすすめします。ここでは参考として、家庭でできる基本的な対策の流れを紹介します。
- 屋根裏や庭など、被害の範囲と侵入経路を確認する
- ペットフード・生ゴミ・落果など、エサになるものを片付ける
- 忌避剤や光・音を使い、居心地の悪い環境をつくる
- 侵入経路となっているすき間・破損箇所をふさぐ
- 継続的に見かける場合は、自治体の環境担当窓口に情報提供する
対策を行っても被害が続く、あるいは天井裏など自分で確認できない範囲に被害が及んでいる場合は、家庭での対策では対応しきれていないサインです。無理を続けず、専門業者への相談に切り替えましょう。
自分での対策が難しい・改善しない場合は業者へ


ここまで紹介してきたセルフ対策を行っても改善しない場合、天井裏の奥など自分では確認・対応しきれない場所にアライグマが住み着いている可能性があります。そのような場合は、無理に自己流の対策を続けるのではなく、専門業者への相談を検討しましょう。
- 対策を行っても物音や被害が続いている
- 天井裏など、自分では確認・作業ができない場所に住み着いている
- 侵入経路が複数あり、すべてを自分でふさぎきれない
- アライグマかどうか、種類の判別に自信がない
専門業者に依頼すると、被害状況の調査、捕獲や追い出し、侵入経路の封鎖、消毒・清掃までまとめて対応してもらえることが多くあります。料金や作業内容は業者によって差があるため、1社だけで即決せず、複数社の見積もりを比較検討することをおすすめします。
よくある質問
Q. アライグマはなぜ日本にいるのですか?
A. 1970年代を中心にペットとして輸入された個体が、飼いきれなくなって逃げ出したり放されたりして野生化したことが主な原因です。天敵が少ない環境で個体数を増やし、全国に分布が広がりました。
Q. 自治体の対策だけで解決しないのはなぜですか?
A. アライグマは広範囲を移動するため、一つの自治体だけで対策をしても、隣接地域から再び入り込んでしまうことがあります。広域での連携に加えて、住民一人ひとりがエサを与えない・住み着かせないといった対策を行うことも欠かせません。
Q. 捕まえたアライグマを自分で別の場所に放してもいいですか?
A. いいえ、許可なく移動させたり放したりすることは外来生物法で禁止されています。捕獲後の対応は、必ず自治体や専門業者の指示に従ってください。
Q. 対策をしても本当に効果はあるのですか?
A. 地道な防除活動の成果として、捕食被害を受けていた在来種の個体数が回復した事例も報告されています。すぐに結果が出るものではありませんが、継続的な対策には意味があるといえます。
アライグマは、ペットとして輸入された個体が野生化したことで外来種として定着し、外来生物法に基づく「予防・早期発見・管理」の3段階で対策が進められています。自治体の広域的な取り組みに加え、私たち一人ひとりが「入れない・捨てない・拡げない」を意識し、家に住み着かせない工夫を続けることが対策の土台になります。自宅の被害が改善しない場合は、無理をせず専門業者への相談も検討しましょう。










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