駅前の街路樹や電線に夕方になると数十羽が集まり、鳴き声とフンで、歩道も車にも被害が出てしまう。ベランダや駐車場でも、同じような被害に悩まされている方は少なくありません。ところが、ムクドリの撃退は「音を出せばいなくなる」というほど単純ではなく、国の研究機関の資料でも、威嚇はすぐに慣れが生じ、追い払うと別の場所に移ることがあると説明されています。この記事では、ムクドリの生態と数字、最初にやるべきこと、撃退方法ごとの特徴と限界、法律上の注意点、業者に頼むべきタイミングまでをまとめて解説します。
- ムクドリは夏(6月末〜10月半ば)に数百〜数万羽のねぐらをつくる。街なかのトラブルは、このねぐらが原因になることが多い
- 音・光・猛禽類の模型・剪定・ネットなど方法は多いが、どれも効果は一時的になりやすい。複数の方法を組み合わせ、数が少ないうちに始めるのが基本
- ムクドリは鳥獣保護管理法で保護されており、許可なく捕獲したり傷つけたりできない
- 個人での対策には限界がある。ねぐらが大きくなる前に、自治体や専門業者への相談も検討する
ムクドリはなぜ集まる?

撃退方法を選ぶ前に、ムクドリがいつ、どんな場所に、どれくらい集まるのかを押さえておきましょう。時期と数字がわかると、「今すぐ動くべきか」「どこまで期待できるか」が判断しやすくなります。
繁殖の数字:3月下旬〜7月に繁殖し、巣立ちまで約35日
ムクドリの繁殖期は3月下旬〜7月で、年に1〜2回繁殖します。薄い青緑色の卵を4〜7個産み、約12日でふ化し、ふ化後約23日で巣立つことが、農研機構の資料に示されています。巣立ったあとも約1か月は親と行動を共にします。
また、東京都の資料では、疎林の樹洞や人家の戸袋に巣をつくることがあり、戸袋での繁殖では、繁殖中の鳴き声や悪臭、繁殖後のダニの発生が問題になることがあると説明されています。
夏は数百〜数万羽、冬は竹林などに数百〜数千羽が集まる

- 夏ねぐら:繁殖後の6月末頃にでき、数百〜ときには数万羽が集まる。10月半ば頃になくなる
- 冬ねぐら:主に竹林に数百〜数千羽で形成される。近年は一年中ねぐらができる地域もある
- 都市部のねぐら:駅前の単木や数本の樹木、公園の樹木、神社の竹林などで確認されている
- 【東京】西葛西駅前(江戸川区):目測で約3,000羽が確認された
夏ねぐらの時期は、ちょうど6〜10月です。駅前の街路樹に数千羽が集まる状況は、この夏ねぐらの時期に起こりやすいことがわかります。初夏の小さなねぐらが次第にまとまり、晩秋には万単位の大集団になることも珍しくない、と大阪府の資料にも書かれています。
被害の広がり:農作物は6〜10月、都市は鳴き声とフン
農作物では、モモ・ナシ・ブドウ・カキなどが対象で、被害は主に6〜10月、北海道から九州までほぼ全国に及びます。被害面積は1992年以降3〜6千ha前後で推移し、1996年以降は減少傾向でしたが、2010年以降は減少が弱まり横ばいです。
都市部では、東京都内でも島しょ部を除く地域で騒音やフンなどの生活環境被害が問題になっています。フンや悪臭についての問い合わせが毎月2〜3件ある、という八王子市の例も記載されています。
編集部ムクドリの被害は「夏ねぐらの時期」に集中します。毎年6月末ごろから急に増える場所は、秋まで続くと考えて、早めに対策の準備をしておくと慌てずにすみます(編集部の目安)。
ムクドリが集まり始めたら、まず何をすればいい?
最初の対応で大切なのは、数が少ないうちに動くことです。一度大きな群れが定着すると、追い払いが難しくなると、自治体の資料でも説明されています。
- 場所と時間を記録する:どの木・電線に、何時ごろから何羽くらい集まるかをメモ・写真で残す
- 巣やヒナには触らない:戸袋などに巣がある場合、卵やヒナがいる巣は許可なく取り除けない
- エサを与えない:エサを出すと数が増え、問題が大きくなりやすい
- フンを避ける:夜間、定着した街路樹や電線の下はなるべく通らない
- 管理者・自治体に連絡する:街路樹・公園・施設ごとに担当部署が変わるため、場所の管理者に相談する
街路樹や電線、公園の木など、自分の敷地ではない場所にねぐらがある場合は、個人で木を切ったり、装置を設置したりすることはできません。まずは管理者(道路管理者・公園管理者・電力会社など)や、市区町村の担当窓口へ連絡しましょう。



ご相談で多いのは「追い払ったのに隣の木に移っただけだった」というケースです。場所を変えて被害が続くことがあるので、建物のどこから入られているのか、フンの場所はどこか、最初に状況を確認してから方法を決めます。
ムクドリは勝手に捕獲・駆除できる?法律と捕獲数
「追い払えないなら、捕まえてしまえば」と考える方もいますが、ムクドリも野生の鳥です。鳥獣保護管理法の対象になるため、許可なく捕獲したり傷つけたりすることはできません。
鳥獣又は鳥類の卵については、その捕獲、殺傷又は採取が禁止されています
環境省「捕獲許可制度の概要」
自宅などの樹木に巣をつくられた場合も、捕獲や駆除を行うには鳥獣保護管理法に基づく許可が必要です。卵やヒナがいる巣は、農作物や生活環境への被害があれば有害鳥獣捕獲の許可を取って除去でき、卵やヒナがいない巣は許可がなくても除去できると、名古屋市の資料に説明されています。緊急でなければ、ヒナが巣立つまで(おもな鳥で3〜4週間程度)待つことが求められています。
許可なく捕獲・殺傷・飼育をすると、1年以下の懲役または100万円以下の罰金の対象となります。
- 東京都:19/3、22/1、49/-
- 千葉県:236、183、301
- 愛知県:1,921、2,784、2,730/240
- 大阪府:202、112、186
市街地などの狭い場所では箱わなが主に用いられます(東京都の資料)。ただし、数字を見ると、東京都では年間で数十羽にとどまります。数千羽規模のねぐらに対して、捕獲だけで被害をおさえるのは難しいことがうかがえます(編集部の読み取り)。捕獲による個体数の抑制効果は小さいことも、農研機構の資料で示されています。
ムクドリの撃退方法
ムクドリの撃退方法は、大きく「音」「光」「見た目(模型)」「木や場所の管理」「物理的に止まらせない」に分けられます。まず全体の特徴を比べてみましょう。
| 方法 | 内容 | 期待できること | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 音で追い払う | 手を叩く、笛、爆竹、特殊波動装置など | ねぐらをつくり始めた初期なら効果が出やすい | 慣れが生じやすく、音がやむと戻る例がある。近隣への騒音配慮が必要 |
| 光で追い払う | 懐中電灯、投光器などで照らす | 暗くなる時間帯に頻繁に当てると嫌がる | 数日連続で行う必要がある。光が近隣に入らないように注意 |
| 猛禽類の模型・鳴き声 | タカなどの模型、はく製、鳴き声の発信 | 設置当初は効果が期待できる | すぐに慣れるため、動かす・組み合わせるなどの工夫が必要 |
| 木の剪定・植え替え | 枝を減らす、とまりにくい樹種に替える | ねぐらにしにくい環境になる | 管理者の作業が必要。別の木に移ることがある |
| 電線・足場への対策 | テグス、カバー、ネットなど | とまる場所を物理的になくせる | 電線は電力会社などとの調整が必要 |
| 組み合わせる | 上記を交互・同時に行う | 単独より効果が続きやすい | 手間と費用がかかる |
音で追い払う:数が少ないうちに、複数日続ける
手を叩く、笛を吹くなど、大きな音を出す方法です。数が少ないうちに行い、ねぐらをつくらせないようにするのがコツと、長野市の資料で説明されています。爆竹を使う方法もありますが、火災の危険や騒音の問題があるため、個人が住宅地で行うのは現実的ではありません。
都内でも用いられている特殊波動装置は、不規則なパルス音を出す装置です。西葛西駅前(江戸川区)では2015年3月から設置し、一時的な効果を確認したものの、音がやむと鳥が戻ってくる状況も見られました。
有効な解決策を見出すに至っていません
江戸川区「区民の声(ムクドリ対策)」
光で追い払う:暗くなり始めてから数日続ける
ムクドリは光を嫌う性質があり、投光器で照射してねぐらを移動させる方法があります。辺りが暗くなり始めた頃から、数日間続けて行うとされています(大阪府の資料)。この資料にはムクドリ独自の対策は書かれておらず、カラスのねぐら対策に準じるとされている点には、注意が必要です。
猛禽類の模型・鳴き声:設置当初は効果があるが慣れやすい
タカなどの猛禽類の模型やはく製、鳴き声の発信は、東京都内でも行われている方法です。威嚇の手段は設置当初は効果があるものの、「すぐに慣れを生じる」ため、期間が長くなると効果が薄れる、と農研機構の資料に示されています。
同じ場所に置きっぱなしにするのではなく、位置を変える、ほかの方法と交互に使うことで、慣れを防ぎやすくなります。
剪定・植え替え:ねぐらにしにくい木にする
ムクドリが集まる木の枝を減らす剪定は、自治体でも行われています。街路樹の剪定や、とまりにくい樹種への植え替えを実施している八王子市の例があります。ただし、東大和市のように強剪定やネット設置、音源の利用を行っても「抜本的な解決方法とはならず」苦慮している例もあります。
自宅の庭木であれば、日当たりや風通しを考えて、枝葉を整理しておくのも一つの方法です。公道の街路樹や公園の木は、管理者の作業になります。
電線・足場への対策:止まれない環境をつくる
電線にとまりにくくする対策も、自治体で行われています。電力会社の協力で電線にテグスを張っている八王子市の例があります。電線にとまりにくくするカバーの設置が効果的とも、名古屋市の資料に書かれています。電線は電力会社などの管理物なので、個人で触れず、必ず相談してください。
組み合わせる:威嚇+遮断で効果を続ける
つくば市近郊のナシ園で、7・8月に銃で駆除し、園の中央に爆音機を設置し、側面を網で覆った結果、被害がほとんどなくなった例が、農研機構の資料で紹介されています。これは農地での例ですが、複数の手段を組み合わせることで、効果の持続が期待できるという点は、街なかの対策にも通じます。



市街地の対策では「音+光+とまれない環境」のように、性質の違う方法を重ねるのが現実的です。ただし、効果は一時的になりやすいので、「完全にいなくなる」ことを目標にせず、被害が出ている場所から離れてもらうイメージで考えると失敗が少なくなります(編集部の知見)。
ムクドリの撃退の注意点とポイント
方法を選ぶときに見落としやすい点を、ここでまとめて確認しましょう。
追い払うと別の場所に移ることがある
追い払われた鳥は、新たな場所を探して分散します。場所を変えるだけで解決しない可能性があることは、大阪府の資料でも説明されています。追い払いでねぐらが分散し、かえって被害が広がることがあるため、ムクドリがねぐらにできる場所を残すなど、共存の方法を考える必要がある、と農研機構の資料にもあります。
広場からの一方的な追い出しは周辺地域への被害拡大を招くとして行わず(江戸川区)、毎日の清掃と高圧洗浄で衛生面を保つ方針を取っています。
「早く・連続して」が基本。一度定着すると難しい
ねぐらの初期に、しつこく追い払うのが効果的とされています。数日連続で、複数の方法を交互に使うと効果があるとされており、大きな群れが定着してからでは遅くなります。
個人では限界がある。近隣や自治体と連携する
個人での対策は難しいため、市町村や地元自治会が主導することが望ましいとされています(大阪府の資料)。有害鳥獣の捕獲許可に関する窓口も、市町村が担当します。被害が広い範囲に及ぶ場合は、近隣や自治会、管理会社などと足並みをそろえて相談しましょう。
フンの掃除は衛生対策として必ず行う
清掃は、悪臭や羽毛の飛散をおさえる衛生対策であり、鳥自体を減らす対策ではありません。それでも、フンを放置すると悪臭や汚れが広がるため、撃退と並行して行う必要があります。
撃退が難しい場合は駆除業者へ


次のような場合は、個人で対応するよりも、専門業者に相談するほうが安全で確実です。
- 戸袋や屋根まわり、ベランダなど、建物に巣やフンの被害がある
- 巣に卵やヒナがいて、取り除いてよいか判断できない
- 音や光を試したが、数日で戻ってくる
- 高所作業が必要で、転落の危険がある
- フンの量が多く、悪臭や衛生面が気になる
- 賃貸・マンションで、自分の判断で動きにくい
害虫・害獣駆除サービスに関する相談は、全国の消費生活センターで年々増えています。相談件数は2018年度の854件から、2023年度には2,290件と約2.7倍になり、契約をめぐるトラブルも目立ちます。
とくに気をつけたいのが料金のトラブルです。広告では「約500円〜」とされていたのに、作業後に約20万円を請求された、「約1,000円から」の広告が最終的に約50万円になったという事例も紹介されています。極端な格安料金をうたう広告には注意し、複数社から見積もりを取る・不安をあおる営業には応じない・納得できないときはその場で支払わないことが大切です。



業者の見積もりを比べるときは、「鳥獣保護管理法の許可や届出への理解があるか」「施工後のネットなどの再発防止まで含むか」「追加料金の条件が書面にあるか」の3点を確認しましょう(編集部の知見)。
ムクドリの撃退に関するよくある質問
ムクドリは何月ごろに集まりますか?
繁殖期は3月下旬〜7月で、繁殖後の6月末頃から数百〜数万羽の夏ねぐらができ、10月半ば頃まで続きます。そのあとは竹林などに冬ねぐらをつくり、近年は一年中ねぐらができる地域もあります。
ムクドリを捕まえたり、巣を壊したりしてもいいですか?
いいえ。ムクドリは鳥獣保護管理法で保護されており、許可なく捕獲したり傷つけたりすることはできません。卵やヒナがいる巣も、むやみに取り除けません。卵やヒナのいない巣は、許可なく除去できるとされています。
音や光で追い払えば、いなくなりますか?
一時的な効果は期待できますが、すぐに慣れが生じる、音がやむと戻る、別の場所に移るといった限界が、国の研究機関や自治体の資料で示されています。複数の方法を組み合わせ、数が少ないうちに数日続けるのが基本です。
街路樹や電線に集まっている場合は、どこに相談すればいいですか?
場所の管理者によって窓口が変わります。街路樹は道路管理者、公園は公園管理者、電線は電力会社など、場所ごとの担当部署に相談してください。まずは市区町村の窓口に問い合わせるのが近道です。
業者に頼むと、費用はどのくらいかかりますか?
被害の場所、巣やフンの状況、高所作業の有無、ネットなどの施工内容で大きく変わるため、一律の金額はいえません。極端に安い広告には注意し、複数社から見積もりを取って内訳を比べてください。
- ムクドリは6月末〜10月半ごろに夏ねぐらをつくり、数百〜数万羽が集まる
- 音・光・模型・剪定・電線対策などの方法はあるが、慣れや移動により効果は一時的になりやすい
- 数が少ないうちに、複数の方法を組み合わせて数日続けるのが基本
- ムクドリは保護されており、許可なく捕獲できない。個人で難しい場合は、自治体や専門業者に相談する










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