朝起きたら体に赤い発疹があり、原因がわからない……その正体はトコジラミ(南京虫)かもしれません。近年、国内でのトコジラミの相談件数は急増しており、誰の家庭にも起こりうる身近なトラブルになっています。この記事では、国や自治体が公表しているデータをもとに、トコジラミの生態や被害の実態、正しい駆除方法を解説します。
- 東京都のデータでは、トコジラミの相談件数は平成17年度の26件から令和2年度には458件へと約17倍に増加している
- メス1匹が生涯で200〜500個の卵を産むなど、繁殖力の高さが被害拡大の一因になっている
- 大阪府の情報では、ピレスロイド系の薬剤を使うと効かないだけでなく被害が拡大することがある
- 個人での完全な駆除は難しく、早期に専門業者へ相談することが被害拡大を防ぐポイントになる
トコジラミとは?

トコジラミ(南京虫とも呼ばれます)は、カメムシ目トコジラミ科に分類される吸血性の昆虫です。人やペットの血液だけを栄養源としており、大阪府の資料でも「カメムシの仲間で、成虫は2〜8mm程度の褐色」をした虫と紹介されています。かつては日本国内でもよく見られた害虫でしたが、生活環境の改善により一時は減少し、近年になって再び被害が増加しているという経緯があります。
羽を持たないため空を飛ぶことはできませんが、歩行での移動スピードは非常に速く、荷物や衣類にまぎれて別の部屋・別の建物へと運ばれてしまうことも珍しくありません。まずは「どんな虫なのか」を正しく知ることが、早期発見と早期対策の第一歩になります。
トコジラミの相談件数はどれくらい増えているのか
国レベルでの研究・調査
「トコジラミなんて日本では珍しいのでは」と思うかもしれませんが、その認識はすでに過去のものです。厚生労働科学研究成果データベースでは、トコジラミの効果的な防除法や調査法の開発が国の研究課題として取り上げられているほど、対策の必要性が高まっています。戦後にはよく見られた害虫でしたが、生活環境の改善により一時は減少し、近年になって再び相談件数が急増しているという経緯があります。
東京都における相談件数の推移
東京都保健医療局が公表している資料によると、トコジラミに関する相談件数は平成17年度の26件から令和2年度には458件に達し、この期間で約17倍以上に増加しているとされています。平成24年度には1,032件、平成25年度も4〜12月の時点で283件にのぼるなど、増減はありながらも高い水準で推移してきたことがわかります。
| 年度 | トコジラミ相談件数 |
|---|---|
| 平成17年度 | 26件 |
| 平成24年度 | 1,032件 |
| 平成25年度(4〜12月) | 283件 |
| 令和2年度 | 458件 |
編集部「うちには関係ない」と思っていても、旅行や引っ越しの荷物にまぎれて誰の家にもやってくる可能性があります。
トコジラミの生態と繁殖力
体の大きさと生活サイクル


東京都の資料によると、トコジラミの成虫は体長5mm〜8mm程度で、寿命は3〜4か月とされています。大阪府の情報でも「カメムシの仲間で、成虫は2〜8mm程度の褐色」と紹介されており、色や大きさから他の虫と見分けるヒントになります。卵は産み付けられてから約1週間(5〜11日)でふ化し、1〜2か月で成虫になるとされ、発生から被害が拡大するまでの期間は決して長くありません。
驚異的な繁殖力
被害が広がりやすい最大の理由が繁殖力の高さです。東京都の資料では、メス1匹が1日に5〜6個、生涯では200〜500個もの卵を産むとされています。大阪府の資料でも「1日で3〜6個卵を産み、卵から孵化した幼虫は通常は約1か月で成虫になる」と報告されており、駆除が後手に回ると爆発的に数が増えてしまう点に注意が必要です。
メスは1日に5〜6個(生涯では200〜500個)の卵を産みます。
東京都保健医療局「知っていますか? トコジラミ」より
トコジラミ駆除が難しい理由
トコジラミの駆除は「殺虫剤を撒けば終わり」というわけにはいきません。まず、羽がなく歩行でしか移動できない代わりに移動スピードが非常に速く、家中の隙間という隙間に潜り込んでしまう性質があります。壁と柱の隙間、畳の縁、家具の引き出しの奥など、目の届きにくい場所に分散して潜伏するため、1か所を駆除しても別の場所で生き残ってしまうケースが少なくありません。
さらに厄介なのが、前述の通り繁殖スピードが非常に速く、駆除しきれなかった個体からすぐに数が回復してしまうことです。加えて、次の章で触れるように市販薬剤の中には効果が薄いばかりか被害を拡大させてしまうものもあり、正しい知識なしに自己流で対応すると、かえって状況を悪化させかねません。家全体に広がってしまうと、個人での完全な駆除はほぼ不可能とされている点も押さえておきましょう。
トコジラミの発生サインの見つけ方
被害を最小限に抑えるには、早期発見がなにより重要です。横浜市中区が公開している情報によると、トコジラミはベッド本体の隙間やマットレス、壁と柱の隙間、畳の隙間、壁紙の剥がれている隙間、カーテンの裏、家具の隙間や引き出しといった狭い隙間を好んで潜みます。まずはこうした場所を重点的にチェックしてみましょう。
- ベッド本体の隙間・マットレスの縫い目
- 壁と柱の隙間、壁紙の剥がれている部分
- 畳の縁・畳の隙間
- カーテンの裏、家具の隙間や引き出しの奥
発見時の目印としては、潜んでいる場所の周りに黒っぽい糞の跡が残っていることが挙げられます。江戸川区の相談事例では、寮の一室で発生したトコジラミが「荷物などにまぎれて他の部屋に移動することもある」と報告されており、1部屋だけの被害だと思っても早期の段階で対応することが被害拡大の防止につながります。
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駆除でやってはいけないこと
市販の殺虫剤であれば何でもよいわけではありません。大阪府が公開している情報によると、ピレスロイド系の薬剤を使用すると、効かないだけでなくトコジラミが興奮して他の部屋に移動するなど、かえって被害拡大を招くことがあると報告されています。「効かないから」ともう1本、もう2本とスプレーを使い続けてしまうと、被害範囲を自ら広げてしまうことにもなりかねません。
同資料では、ブロフラニリド、メトキサジアゾン、プロポクスルなどの成分を含む薬剤であれば効果が期待できるとされています。ただし、こうした薬剤を選んで使ったとしても、前述の通り隙間の奥に潜んだ個体まで駆除しきるのは容易ではなく、自己判断での薬剤選びと処理には限界がある点は理解しておく必要があります。
- ピレスロイド系の薬剤だけに頼る(被害拡大のリスク)
- 1か所だけスプレーして安心する(隙間の奥への潜伏を見落とす)
- 発生に気づいた部屋の荷物をそのまま他の部屋に運ぶ
- 症状が軽いからと放置する
トコジラミに刺された場合の症状と対処法


トコジラミに刺されると、非常に強いかゆみが生じるのが特徴です。ただし発生初期は症状が出ないこともあり、被害を受けていることに気づきにくい点には注意が必要です。長期間にわたって刺され続けると、かゆみを感じにくくなることもあるとされており、症状の有無だけで被害の大きさを判断するのは危険です。
刺された場合は、患部を強くかきむしらず、清潔に保ったうえで冷やすのが基本的な対応です。市販のかゆみ止めで様子を見ても症状が改善しない場合や、発疹が広範囲に広がる場合は、皮膚科を受診することをおすすめします。刺され跡が複数、直線状やジグザグ状に並んでいる場合はトコジラミを疑うサインの一つとされているため、心当たりがあれば早めに発生源を確認しましょう。



「気づけばかゆみが減った」は治まったサインではなく、むしろ被害が慢性化しているサインかもしれません。油断は禁物です。
自力で駆除する場合の流れ・方法
トコジラミを自分だけで完全に駆除するのは難易度が高いため、基本的には専門業者に依頼することをおすすめします。以下はあくまで参考情報であり、実行を推奨するものではありません。
発生を1部屋のごく初期の段階で見つけた場合に限り、自分で応急的に対応するという選択肢もあります。ただし被害が複数の部屋にまたがっている場合や、市販薬剤で改善が見られない場合は、自力での駆除にこだわらないことが重要です。あくまで「発生に気づいたばかりのごく初期段階」に限った方法として、基本的な流れを押さえておきましょう。
- 発生範囲を確認する:黒っぽい糞の跡を手がかりに、ベッド周り・畳の縁・家具の隙間など潜伏しやすい場所を一つずつチェックする
- 物理的に取り除く・熱処理をする:ガムテープで捕獲するほか、寝具やカーテンは高温での熱処理やアイロンがけを行い、掃除機で吸い取ったごみは密閉して処分する
- 有効な成分の薬剤を使用する:ピレスロイド系は避け、プロポクスルやメトキサジアゾンなど効果が確認されている成分の薬剤を、隙間の奥まで行き渡るように使用する
効果の薄い薬剤を使い続けて刺激すると、他の部屋へ被害が拡大するリスクが高まります。数日たっても被害が収まらない、あるいは発生源や被害範囲がよくわからない場合は、無理をせず専門業者に任せるのが安全です。
自分での対策が難しい・改善しない場合は業者へ


トコジラミは自分で安全かつ完全に駆除するのが難しいケースが多く、自己判断での対応に不安がある場合は専門業者への相談を検討しましょう。特に被害が複数の部屋にまたがっている場合や、市販薬剤で改善しない場合は、無理を重ねずに業者へ切り替えることをおすすめします。専門業者であれば、発生範囲の正確な特定から、熱処理・薬剤処理を組み合わせた徹底的な駆除、再発防止のアドバイスまで、一連の対応をまとめて任せられるという利点があります。
- 被害が複数の部屋・複数の家具にまたがっている
- 市販の殺虫剤を使っても改善しない
- 発生源や被害範囲がよくわからない
- 刺され跡やかゆみが続いている
専門業者に依頼すれば、発生源の特定から徹底的な駆除、再発防止のアドバイスまでまとめて任せられます。無料で見積もり・相談に対応している業者も多いため、被害に気づいたら、早めに複数社へ相談して比較することをおすすめします。
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よくある質問
Q. トコジラミの相談件数は本当に増えているのですか?
A. 東京都のデータでは、平成17年度の26件から令和2年度には458件へと約17倍に増加しています。海外での流行報道の影響もあり、近年さらに相談が急増している地域もあります。
Q. 市販の殺虫剤を使えば駆除できますか?
A. 大阪府の情報では、ピレスロイド系の薬剤は効かないだけでなく被害を拡大させることがあるとされています。プロポクスルやメトキサジアゾンなど、効果が確認されている成分の薬剤を選ぶことが重要です。
Q. トコジラミの発生に気づくサインはありますか?
A. ベッドの隙間や畳の縁など、潜んでいる場所の周りに黒っぽい糞の跡が残っていることが目印になります。刺され跡が直線状やジグザグ状に並んでいる場合も、トコジラミを疑うサインの一つです。
Q. 駆除費用の補助制度はありますか?
A. 病院や簡易宿所等の施設を対象に補助制度を設けている自治体はありますが、一般家庭向けの補助制度は現時点では限定的です。多くの場合は自己負担となるため、事前に業者から見積もりを取ることをおすすめします。
トコジラミは繁殖力が高く隙間という隙間に潜伏するため、自己流の対応では被害が拡大しやすい害虫です。市販薬剤の選び方を誤ると、かえって被害範囲を広げてしまうこともあります。黒っぽい糞の跡など発生サインに気づいたら、早い段階で発生範囲を確認し、無理に自分だけで抱え込まず、複数の業者を比較して安全かつ確実に駆除することをおすすめします。
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